舟越保武と佐藤忠良

 佐藤忠良さんが94歳をこえて個展をしているとありました。
健在で制作を続けているということは素晴らしいことであります。
かってNHKで「舟越保武佐藤忠良」さんの60年以上に及ぶ
交流をテーマにした番組をやっていて、再放送を数回やって
いるものですが、脳出血で身体が不自由になってから、車椅子に
のって左手で制作に励む晩年の舟越さんのことを案じながら、
大作に挑む佐藤のことを取り上げていました。作品の元になる
粘土の像が、翌日になったら倒れていたのにショックを受けて、
このようなことはなかったのにと悔やみ、歳をとったというのが
印象に残っています。あの番組はとてもよろしいもので、それこそ
DVDで販売されてもいいものですがね。
 舟越さんは、強いカトリック信仰に支えられた制作活動を行い
長崎の26聖人やダミアン神父、原の城といった作品で著名で
ありますが、エッセイストとしても著名です。ちくま文庫には
「巨岩と花びら」という代表作がはいっていますが、これは
とってもおすすめであります。
作品だけで生活を支えるというのはたいへんで、生活が大変で
あったというような話があるのですが、この家庭からは舟越桂
すえもりブックスをやっておられる末盛千枝子さんがでています。
 このエッセイ集には作品をリュックにつめて画廊に持ち込み
買い取ってもらい、その代金で肉を買って家族8人ですきやきを
するというはなしがあります。(芸大の最終講義より)

「 今は美術家がむしろ異常なほどにもてはやされたりしていますが、
昔は美術家などは貧乏があたりまえでした。必需品でないものを
作っていて、それで食えるわけがない。そういう時代がつづき
ました。・・・
 私は貧乏をしていたから、仕事がたくさんできたように思います。
ですからお金がないときに、デッサン一枚でも、買ってもらおうと
思って描いたものは、やはり生命がけみたいなせいか、いまみても
割合よく描けていて、古いものをみるとなつかしく思います。」