本日も雨模様で、雨は降ったり止んだりであったようです。これじゃ庭の草取りを
する気分にもならずでありまして、家のなかで過ごすことが多くなりです。
それじゃ本でも読みましょうで、ここ数日手にしている津原泰水さんの「ブラバン」
を読み続けることにしました。
この本の帯には、「クラッシックの、ジャズの、ロックの名曲にのせ、総勢三十四名
のメンバーたちが繰り広げる、大群像劇。」とあります。高校のブラスバンド部で出会
うメンバーだけで三十四名なわけです。昨日に記しましたように、この一人一人につい
て名前があって、性格付けが記されています。それが作者による登場人物紹介という
ものになっているのですが、この登場人物はどのように作品のなかで動かされるのかと
いうところに興味はいくのですが、現実には、これを絞り込んで数人にスポットをあて
ることになっていきます。それでもずいぶんと多くの人に光りがあたるので、あの人と
この人がごっちゃになってしまいます。
作者自らが、語り手に「吹奏楽部以外の人々まで描写していると本当に煩雑になって
しまうので名前さえきさないけれど」といわせるくらいのものであります。
ということで、筋を追おうとしたときには、人物がじゃまをしたりしてです。
当方にとって面白かったのは、各章のタイトルが曲名となっていることでして、それ
を通して時代の雰囲気を伝えようとするところでした。
「I.G.Y」という章は、1980年代の風俗を話題にしていますが、このところスマホ販売
会社が、月額1980円というのをアピールするために1980年代ディスコ調の広告を流して
いますが、作者にいわせると「肩幅の広い上着、はね上げた髪。女たちの太い眉。カフェ
バー、ディスコ、急ごしらえのパステル調リゾート。短命な流行語、短命な音楽。何万円
もする布鞄。」ということになります。
「I.G.Y」は、この時代にはやったドナルド・フェイゲンの曲のタイトルでありました。
一番よろしいのは、最終章の「ヴューズ・オブ・ア・シークレット」でありまして、
この章を読みますと、津原さんが音楽をとても好きであるということが本当に良くわかり
ます。この章の表題曲は、ジャコ・パストリアスによるものですが、ジャコのビッグバン
ドに参加してハーモニカを演奏しているトウーツ・シールマンスについてのくだりは、
非常によろしでした。
本日はYouTubeで、ドナルド・フェイゲンとジャコの曲を聞きながら、記することと
なりました。