新潮文庫 創刊100年 2

 新潮文庫の「創刊版完全復刻」というのは、やはり賞賛に値する快挙でありますね。
ほとんど店頭に並ぶこともなく、多くの人の目にも触れることがないだろうというの
が残念ですが、この時代に、こんなにも手間のかかることを大出版社がやるのは偉い
です。
 日本には優れた書籍づくりの伝統があるはずですが、本が売れなくなったことで、
こうした書籍づくりを行う職人さんたちが、どんどんと姿を消してしまっていると
思われます。その内に、すこし手のこんだ本を作ることができなくなってしまうの
でしょう。洋本作りは、外国からの技術導入で始まったのですが、その過程で日本
独自の技法が発達したはずであります。そうした技術は、使われなくなると、いつの
まにか機械でなければ、出来る人がいないということになります。
 日本の伝統技術では、あちこちで見られることが、本の世界でも起こるのは確実で
あります。
 ダウンロードして画面で見る本(といえるのかどうかですが。)というのが増え
ると、その一方で印刷されて製本された本は減ることになりです。
こうした流れのなかで、新潮社が復刻出版をするというのは、記念事業であったと
しても褒められるものであります。
 作る人がいなくては紙の本(特に限定の)はできないのでありまして、そうした
作り手の技術が絶えないように努めるというのも、出版業界の責任ではないでしょう
か。