ジャケ買い

 デザイナー 長友啓典さんの「装丁問答」を手にしていましたら、久しぶりで
ジャケ買い」という言葉を目にしました。

装丁問答 (朝日新書)

装丁問答 (朝日新書)

 これに収録されている文章は朝日新聞のPR誌「一冊の本」に連載されたものだそう
です。この連載が終わったのは2002年3月のようですから、その後10年近くもたって
から一冊になったものです。それにしても、「一冊の本」は創刊から欠かさずに定期
購読して、特に読みやすい文章は読んでいるのはずですが、このような連載があった
ことはすっかり頭からとんでいました。
 「ジャケ買い」という言葉は、この本の「はじめに」にあるものです。
「ジャケ」というのは、ジャケットを省略した言い方です。いまから50年近くも前に
は「ヴァンジャケット」という若い人向けのアパレルメーカーがありましたが、
この会社のことを「ヴァンジャケ」と略していって、話しが通じた時代のことです。
(「晩鮭亭」というブログネームは、これが下敷きになっていますね。)
 長友さんは「はじめに」を、50年前にデザイン学校に通っていた時代の思い出から
書き起こしています。
「50年前に遡るが、桑沢デザイン研究所に通っていた頃モダンジャズにのめり込んだ。
新宿には「キーヨ」、「木馬」、「DIG」・・。渋谷に、下北沢、吉祥寺、池袋にも
ジャズ喫茶がいたるところにあった。四六時中何かといえば、それらのお店にコーヒー
一杯で居つづけたものだ。そこには演奏中のレコードジャケットが必ずプレーヤーの
ヨコに立て掛けてあった。盗みたくなるほどカッコ良かった。・・いってみれば平面
デザインの宝庫であった。ここでデザインの表現を教わったといっても言い過ぎでは
ないだろう。」
 最近でもジャズ喫茶というのは、まだ残っているのでしょうが、名曲喫茶のジャズ
版のような店は、今から40年前であれば、ちょっとした街であれば必ずといっても
いいくらいにあったものですが、最近はすっかり姿を消しています。
 先日にNHK教育TVをみていましたら、コーヒー店を話題とする番組で、こうした
昔風の「ジャズ喫茶」で、いまでも営業を行っているところを取り上げていました。
 どういうわけか古本ブログをされている方にはジャズを愛好される人が多くて、
本を読みながらジャズを聴くというような状況について描かれているのをよく拝見
します。