学問の春 4

 本日も山口昌男さんの「独断的大学論」から話題をいただきです。

独断的大学論―面白くなければ大学ではない!

独断的大学論―面白くなければ大学ではない!

 札幌大学には、いまも山口文庫というのがあることになっています。もともと大学
図書館の一部をなすようなものとはなっていないため、大学のオフィシャルページ
では存在も知ることができないのですが、ここは山口昌男の知の迷宮であるのです。
札幌大学の文化学部長に就任するとき、蔵書を寄贈することを条件に、本を置く
場所をよこせと大学と交渉しました。大学側はいい顔をしませんでした。」
 この時に寄贈した蔵書は約4万部で、山口昌男さんものの一部であるとのことです。
結局、大学の建物の地下の倉庫用に確保されていたところが確保されて、そこが
「山口文庫」となりました。
「正規の図書館に対して、ここは認知されない不義密通の子なので、人がよりつかない
ように隔離されているのです。山口文庫は制度的に呪われた場所なのです。」
 山口文庫をまもっているのは、「田中千恵子さんという可憐な女性」であります。
「山口文庫では、独自の分類によって本が整理されていますが、そこにいたるまでは
苦闘の連続でした。不義密通によって生まれた図書館ですから、大学側は人手を出して
くれない。本の搬入から整理まで、全部自分たちの手でやらなければならなかった
のです。田中千恵子さんを中心に学生たちが協力してくれました。」
 山口昌男さんが大学をさっても、かわらずで山口文庫が活動を続けることができる
のは、大学はもともと場所を貸しているだけで、文庫スタッフによる自主運営が
確立しているためでしょう。考えようによっては、これは画期的なことであります。
「私はこれまで世界のあちこちをめぐりながらさまざまな図書館を訪れてきましたが、
魅力を感じたのは、個人の蔵書を中心とした文庫でした。なかでももっとも好きなの
ロンドン大学のワールブルグ文庫です。・・このワールブルグ文庫の分類がまた
きわめてユニークで、新しい人間科学のパラダイムを示しているといってもよい
ものです。分類というのは、一つの知的体系をつくり出すことだということが
ワールブルグ文庫によくしめされているのです。」