中原弓彦と小林信彦3

 夜の遅くになってから、本日は何を話題にしましょうかと考えておりましたら、
小林信彦を特集した古い雑誌があったなと思い出しました。
「LITERARY Switch」という91年7月にでた、雑誌スイッチの文芸特集であります。
この文芸版は、なかなかいいものであると思ったのですが、そんなに長く続かずで
やめになったと思います。小生の手元には5号までが残っているのですが、本当は
どこまでいったのでしょう。(これもネットで調べるとわかるのですが。)
 スイッチ・コーポレイションという版元は発行人が朝妻一郎とありまして、この
名前は小生の世代にはなつかしい音楽評論家であったかたです。いつからか、
プロデュースを手がけるようになって、その関係で出版などにもかかわるように
なったものでしょう。
小林信彦特集をするとしたら、スイッチとかクイックジャパンなんて、なんでも
ありのようなノンジャンルの特集を組む雑誌のほうがむいているのかもしれ
ません。
 91年7月発行となる「リテラリースイッチ」2号における「小林信彦特集」は
小林信彦を探せ」というタイトルで、あの大判の雑誌で写真などもはいって
80ページほどあります。
・ ロングインタビュー 小林信彦の作り方
・ 「世界で一番熱い島」をめぐる日記
・ 小林作品のおいしい楽しみ方
・ 小説 男たち
 上のような内容でありますが、このインタビュー(聞き手は編集部とあり)の
なかでいかにも、小林さんらしいと感じた発言は、次のようなものです。
「 今非常に不幸なのは、小説っていうものが生み出されて、そのなかにはもちろん
 ダメなものもいいものもある。そこの区分けっていうのが、かっての批評家の
 仕事だったわけです。・・・昔は作家と批評家の人数も少ないし、密着していた。
 メディアもこういうふうに大きくなかったですしね。今だったら、「宝島」って
 いう雑誌にも書評は出るわ、それで、ひょっとするとそっちのほうが読者を動かす
 力が大きいかもしれないわけ。そっちのほうがコミュニケーションとしての力は
 はるかに強いわけですね。そういう声っていうのはこわいですよ。みんなほとんど
 気が付いてないですけどね。・・
  たとえば、萩原健太さんていう音楽評論家がいるでしょ。『世界でいちばん熱い
 島』について世間では笑いが少ないっていっているけど、僕はそうは思わない。
 裏側に作者の悪意ある内向した笑いが張り付いているって、ラジオでおっしゃった
 んですよね。彼は音楽評論家っていうことになっているけど、そこらの文芸評論家 
 より小説がきちんと読めるんじゃないかな。」

 あらためてですが、この特集は、けっこうつかえるものであると感じたのです。
 雑誌というのは、時代よりも15年くらい前を走っていて、5号くらいで休刊に
なるものが、後世になってから評価があがるものであるのかもしれません。