「風俗の人たち」永沢光雄

 本日の夕方に、このまちにあるブックオフへといって百円棚をあさっておりました。
 前回にいったときとくらべると、すこしいれかわっておりまして、眼をひくものが
数冊ありました。半額のたなには、池内紀のものが何冊かあったのですが、みすずの
ものなどが、百円棚におちてくるかどうか、しばらく楽しみに見守ることといたし
ましょう。
 百円(ただしくは105円)のものを中心に数冊購入をしたのですが、本日の話題と
するのは、この一冊であります。 
 「風俗の人たち」 永沢光雄 筑摩書房
 
  永沢さんというと、文芸春秋からでているAV女優へのインタビュー集が有名であり
ますが、ほとんど一般の書店で眼にすることのない雑誌に連載されたものを、よくぞ
一冊にしたものと思います。
 この「風俗の人たち」は、「クラッシュ」という雑誌に連載されていたものです。
これまた、ほとんど聞いたこともない雑誌でありますが、版元はどこであったのでしょう。
永沢さんは、この「風俗の人たち」のあとがきで、連載されていたときのことを、次の
ように書いています。
「 ちゃんとしたエロ本で風俗情報と銘打ちながら、あれほど読者の方々のお役にたてない
ページもなかったものなあ・・今まで何年も連載が続いたほうが不思議だよ。・・
 わたしも元はエロ本の編集者、私の風俗に関する文章がいかにエロ本に無用か、いや
無用どころか利益をあげなければいけない雑誌にとって、いかにじゃまな存在であったかは
重々承知しておりました。それなのに今まで、いくらものを考えないとはいえ、よくエロと
して実用的ではない私ごときの文章を載せ続けてくれました。」 
 ライターとして、ほとんどこれ以下はないという感じであります。
「 フリーライターというものは、誰でもなれる。今日からわたしはフリーライターなのよと
世間に言えばその瞬間からその人間はフリーライターなのである。それは画家でもミュージシャン
でも小説家でも同じだ。あとは仕事があるかないだけだ。仕事がなければたんなる無職である。
その身で下手に犯罪でもすると、世の人々からやっぱり無職だからなと思われる立場である。」
 
  この本に収録されている「ピンク映画」の一節から
「それにしても昔のポルノ映画(先ほどから私はポルノ映画と書いているが、実際は
なんと呼ぶのが正しいのだろう。今、津田一郎というスチールカメラマンが書いた
『ザ・ロケーション』という本を開いたら、津田氏はにっかつロマンポルノをポルノ映画、
それ以外の大蔵や新東宝の映画をピンク映画とわけている。その意味では私が観たのは
ピンク映画なのだろう。確かにピンク映画と読んだほうがしっくりとくる。)は、こんなに
セックスシーンが多かったろうか。」

 エロ本に書かれる文章としては、すこし読ませすぎるかもしれません。これが連載されて
いた雑誌の編集長は、この文章は「編集者とレイアウター」以外の誰も読んでいないと
確信をもっていうのだそうです。