ノアの本 5

 大槻鉄男さんには、亡くなったあとに作品集が編まれています。林ヒロシさんの
「臘梅の記」は、この作品集と合わせてよまれるべきものでしょう。
 「臘梅の記」の冒頭におかれている「素描」という文章の末尾には、「樹木幻想」
山田稔編・大槻鉄男略年譜を参考と書かれています。「樹木幻想」については、
「素描」で、「(死から)一年後に大槻先生の詩と散文を収めた『樹木幻想』
編集工房ノア)が先生の死を惜しむ人たちの手によって編まれた。」とふれて
います。
 もともと部数が少なかったのでしょうが、この大槻鉄男さんの「樹木幻想」は
当初の見込みよりも売れたようで、すぐに増刷されています。きっとお仲間たちが
熱心に販売をしたのでありましょう。当方は、新聞記事かなにかで、この本が
でたことを知って注文して確保しました。

 「樹木幻想」のあとがきは、編者である山田稔さんが書いています。
大槻鉄男の死後間もなく友人たちの間で、彼の書き残したものをまとめて出版する
計画が立てられ、昨春以来、作品と遺稿の収集・整理の作業が続けられてきた。そして
数度にわたる会合の末に、遺稿集でなく、厳選して全一巻の作品集をまとめるという
編集方針が定まったのであった。・・・・
 大槻鉄男その人を取り戻すことはもはやかなわぬことになったいま、われわれは
彼のこころの形姿ともいうべきこの一巻を編むことによって、肉体の消滅がつくり
だした取り返しのつかぬ空隙をすこしでも埋められたらと願うものである。」