買った本 借りた本 読んだ本
8 私の平成史 中村 稔 青土社
それこそ積読期間も含めて20年間にわたって気になっていた中村さん
の個人史です。最初の一冊は2004年に読んで、次に刊行となったものは
2008年に出た時に買ったのですが、それから積読でありました。
図書館で「私の平成史」を借りて読んで、それで積み木崩しならぬ、積読
崩しとなり、時間はすこしかかりましたが、なんとか未読でありました五冊を
読むことになりました。
これまで中村さんの本は文学関係のものをいくつか読んでおりましたが、
この「個人史」では、もう一つの顔である弁護士としての仕事についても書か
れていて、これがとっても興味深いものでありました。
これに登場する人物では大野正男さんについて書かれたところが印象に
残ることです。天下の秀才がそろう旧制高校の同人誌で出会って、同じく
弁護士となって、大野さんは労働運動などの弁護を引き受けたりして著名で
あったのですが、最後には最高裁判所の判事となります。法律家としては
最高裁判事というのは最高の名誉でありますが、人権派の弁護士としては、
苦渋を伴うものではなかったかというようにあって、晩節を汚したものという
ふうに読みました。
大野正男さんについては、「故旧哀傷」でも触れてましたです。
もちろん、読みどころ一杯で企業の特許権をめぐる紛争のこととか、亡くなっ
た文士遺族の相続の争いに関わらずを得なかったことなど、中村稔さんの表
の話が興味深いことです。
9 零落の賦 四方田犬彦
今年も何冊か四方田さんの本が刊行となったようですが、当方が読んだの
は、この一冊です。以前に「文學界」に掲載になった時に、その一回目を目にして
それが面白かったので、図書館から借りて読んでみたのですが、一度目はその
一回目だけで先には進めずでありました。ちょっと間隔をおいてから、また借り出し
て読んでみましたら、このときはなんとか先に進めることができました。
四方田さんの「賦」は三部作であるとのことで、これを機に他のものも読んでみ
ようと思いました。
このところ佐藤正午さんの小説は新刊ででましたら購入が続いています。
過去の作品はほとんど読んでいないのに、近年の小説は読むという不思議
です。
正午さんの小説は読んでいるうちに自分がどこを読んでいるのかわから
なくなるように書かれているのですが、この作品は、そんなことがなくて、小説
の時間は巻頭が古くて、終わりが新しくなります。
この小説を読み始めた頃に、当方の身近にも交通事故の当事者となった
家族がいまして、これを読みながら身につまされることになりました。
当方の近くの事例は、事故が起きてから半年以上になっていますが、いまだ
処分は決まらないとのことです。
11 今は何時ですか? 丸谷才一 新潮社
当方偏愛の丸谷さんの小説。発表されたのが1999年でしたので、それか
ら25年経過してやっと単行本になりました。(それまではアンソロジーと全集
に収録されたのみ)
新潮社「波」2026年1月号は、丸谷才一「今は何時ですか?」刊行記念特集
ということで、平松洋子さんと鈴木結生さんのエッセイが掲載されていました。
「波」の編輯長さんが、「今は何時ですか?」に一役かっているようですが、これ
が単行本となったのも、「百年の孤独」が売れたおかげでありましょうか。



