数学と本

 「数学と本」というのは、届いたばかりの岩波「図書」11月号に掲載の

エッセイで、書いたのは、数学者 河東泰之さんです。

 本はともかくとして、数学というのは、当方から縁遠い世界でありまして、数

学者の本なんて、ほとんど読んだこともなしです。そのなかですこし近しく感じ

ているのは、森毅さんですが、それは数学者というよりも、次のことで。

 松田哲夫さんの「編集を愛して」から引用です。

「新しい文学全集の編者に『もう一人』と僕が言うと、『森毅さん』と、安野か

ら意外な名前があがったのだ。最初は『文学全集の編者に数学者?』と

ビックリした。でも、安野の炯眼は見事だった。なぜなら、森の知識の豊かさ

には、いつも驚かされたからだ。SFには造詣が深く、歌舞伎、三味線、宝塚

歌劇など伝統芸能や芝居の知識も唯事ではない。とにかく、専門の数学を

はじめ科学思想、教育論、現代思想からお笑いまで、硬軟とり混ぜて、あら

ゆるものと軽やかに戯れることができる人だった。」

 なんとなく数学者というと、社会性がなくて、変人というイメージをいだきま

すが、森さんはそうではなかったのですね。

 というのも、もうだいぶん前のことになりますが、TVのバラエティ番組で

河東さんが取り上げられているのを見ていて、さすが数学者というのは変人

が多いことだなと思ったからであります。(やっと最初につながりました。)

 その番組は、東京大学の理系か数学科に進学した人に、インタビューして、

これまで出会った中で、一番優秀と思ったのは誰と、尋ねていくのであります

が、次々と私よりもあの人がとつながっていって、最後に登場したのが河東

さんで、ずいぶんと若くして大学教授になったとありました。

 印象に残ったのは、幼い頃から数学に対して特別な才能を発揮したという

よりも、家庭をもってから近所のお店にお使い(?)にいって、蛍光灯を買いに

いったのだけど、そのあとにお店の方から、奥様が先生を買い物にこさせて

はいけませんよと、店の方から言われたとの逸話が紹介されていました。

まあ、簡単な買い物もうまくできない人と、当方の頭には刷り込まれたので

すが、これは番組の受けを狙ってのミスリードであったのかもしれませんが。

 今月の「図書」の河東さんは、「子供のことからずっと本が大好きである。」

と書いていて、「現代日本の小説も好きである」と書いています。

「一番好きなのは村上春樹で、単行本で出ている小説はすべて三回以上

読んでおり、『ノルウェイの森』が三十回以上読んだ。ほかには直木賞はわり

と私の趣味に近いことが多く、読む本を決める際には受賞作を参考にして

いる。一冊読んで気に入ったら同じ作者の本を片っ端から読むという読み

方だ。」

 この最後の下りを読みましたら、普通の読書好きのおじさんということで、

親しみを感じることです。