本がかってにどこかへ

 あいかわらずで、文庫本一冊を探しています。ひと月ほど前に購入したもの

で、この場でも話題としていますので、作業をしているところの近くにあるはず

でありますが、これが見つからずです。勝手にどこかへと行くようなことはあり

えないので、当方のちょんぼでありますが、さてどこに紛れてしまっているのか

です。そのうちには出てくると思いますが、まったく焼きがまわったことです。

 ちなみにその本は、次のものであります。

 小沢信男さんのエッセイが収録されていて、それを喜んでいたのですが、

他のものはほとんど読んでもいないし、どんなものが収録されていたのかのも

頭に入っていないことです。

 そういえば、このところの中公文庫は「傑作選」というアンソロジーがシリーズ

化していることでして、当方も「喫茶店文学」とか「谷根千文学」などを購入して

おりました。

 アンソロジーというのは、読み手にとってはありがたいのですが、編む方に

とっては、労多くしてそんなに評価されないということで、気の毒なことです。

最近ではこの人が編者になっているのであればということで、手にするといえ

日下三蔵さんがいらして、この人のジャンルは、当方は不案内なこともあり

まして、大いに参考にしております。特に皆川博子さんのものなどにおいて。

 そんなことを思うのも、昨日に話題にしていた松田哲夫さんの本のサブタイ

トル「アンソロジストの優雅な日々」とあったからですね。筑摩書房で大ヒット

したテーマ別アンソロジー「文学の森」を担当していたからですね。あれは

良く売れて、当方も買ったのですが、あまり読むことはできていないこと。

 松田さんが「編集を愛して」に次のように書いています。

「テーマ別アンソロジーといえば、1960年代末に出た『現代文学の発見』

全17巻(学藝書林 67〜69年)が強烈に印象に残っている。このシリーズ

は、尾崎翠の発見、夢野久作など『新青年』の作家たちの再評価、第一次

戦後派への注目など画期的なもので、その後に、大きな影響力を発揮した。」

 この「現代文学の発見」が刊行されていたのは高校から大学の頃であり

ましたが、いくらも手にしていないにも関わらず、このシリーズは忘れがたい

のでありますね。こういう知的刺激をうけるアンソロジーに出会うことができ

たというのは、幸せなことでありました。

 今でも「現代文学の発見」シリーズは入手可能なようですが、その昔の

粟津潔の装丁本がやはりよろしでありますね。