今月の中公文庫の新刊に森あゆみさんが編した「谷根千文学傑作選」と
いうのがあるということで、楽しみにしておりました。
「谷根千文学」というのは、というよりも谷根千という言葉自体が、人が口にする
ようになったのは、そんなに昔ではありませんですね。森まゆみさんがお仲間と
はじめた地域雑誌「谷中・根津・千駄木」のことを略して谷根千と呼ばれるよう
になったのですから、この地域への森まゆみさんの貢献は大きいことです。
そして、今月に中公文庫から「谷根千文学傑作選」がでたのは、この地域雑誌
「谷中・根津・千駄木」の創刊40年を記念してのことなのだそうです。
この地域を舞台にしたり、ゆかりの文筆家等による文章を集めたアンソロジーと
なります。
中公文庫の数ヶ月前には中央線で、今回は谷根千でありますので、こういうの
は楽しいですね。中央線の編は南陀楼綾繁さんで、今回は森まゆみさんですから、
否応なしに期待してしまうのでありました。
ということで、本日に立ち寄った書店で「谷根千文学傑作選」を手にして、すぐに
目次を見ることにです。この地域には、明治以降文豪が多く居住していたので、
頭のほうにはそうしたビッグネームがならんでいます。
戦後の昭和の方は、数少なしですが、そこに小沢信男さんの名前を見出して喝采
をあげることにです。森まゆみさんの編だから小沢さんのものをとってくれるのでは
と期待したのですが、裏切られずです。
当方にとっては、谷中といえば小沢信男さんでありますからね。
この傑作選に小沢さんの文章をとるとすれば、どのようなものがあるだろかと
思いました。森まゆみさんの文庫の解説なんてわけにはいかないでしょうからね。
ということで、気になる森さんが選んだ小沢信男さんの文章は「上野 むかしを
偲ぶ坂めぐり」という4ページに収まってしまう文章でした。初出はと思いましたら
「暗き世に爆ぜ」からとったとありますので、それにあたってみましょうと思いました
ら、まさかまさかで定位置にありません。あれれどこに動かしたろう。
なんとなく「東京人」であったか、「サライ」だったかなと思ったのですが、本日は時
間が足りないので、捜索は明日にです。
探していたときに2010年3月号の「サライ」特集は「東京散歩」がでてきました。
この号で小沢信男さんが東京歩きをテーマに「東京案内」を10冊セレクトしてい
ました。これを紹介してお茶を濁すことにです。
小沢信男さんは、これらの本にコメントを寄せているのですが、そこには次の
ようあります。
「多士済々が東京を歩き、感じ、描いています。私がよく読むのは評論家川本三郎
さん、地域誌『谷中・根津・千駄木』を創刊した森まゆみさん、小説家の松山巌さん、
エッセイストの坂崎重盛さん、評論家の坪内祐三さんなどです。今回は坪内さんの
『東京』と森さんの『ベスト・オブ・谷根千』を推薦しましょう。・・小さな地域誌が、
谷根千という言葉を定着させ、平成の下町ブームを起こしました。」
小沢さんは、1984年にそれまで住んでいた池袋から谷中のお寺の借地に建っ
た古い家に転居したのですが、ちょうど「谷根千」が創刊された年のことでありま
した。