書き直していたのか

 本日の新聞には読書欄がありまして、それには興味深い本がとりあげられて

いました。そのほかにも新刊の広告などもあって、ちょっと楽しいことでした。

興味深い本は、行きつけの本屋には入らないだろうなと思いながら、それでも

念の為こんど行ったときにチェックしてみましょうです。

 中公文庫の新刊広告には、次の書名が目につきました。

「中央線随筆傑作選」であります。そういえば、以前に「中央線小説傑作選」という

のがでていたとのことです。これは当方は見逃しておりました。どちらも編者は

南陀楼綾繁さんでありました。

 たまたま買い物にいったモールに入っている書店で、今月新刊の随筆選を手に

とることができました。どんなエッセイが収録されているのかなと目次をみることに

です。

 すぐに目に着いたのは小沢信男さんのもので、その次には佐多稲子さんものが

おかれていて、さすがに南陀楼さんであります。南陀楼さんがセレクトした小沢さん

の中央線エッセイは「新宿駅構内時計のこと」でありました。

 「新宿駅構内時計のこと」はもちろん読んだことがあるぞと思ったのですが、さて

どこに収録されていたかなと、巻末の小沢さんの紹介のとこに「いまむかし東京逍遥」

とありました。

 小沢さんのエッセイは短いものですからパラパラとながめて、小沢さんについての

南陀楼さんのコメントを見てみることにです。そこには、このエッセイの最後の一行が

決まっているとあるのですね。

 おおそうであるかと、まずはちくま文庫「ぼくの東京全集」を手にして「新宿駅構内

時計のこと」を読んでみることにです。あれっなんかへんであるぞです。

 それじゃと思って晶文社からでた「いまむかし東京逍遥」と、このエッセイの初出で

ある「サンパン」1983年創刊1号もひっぱりだしてくることにです。

小沢信男さんの「新宿駅構内時計のこと」収録のもの

 「サンパン」は1983年4月1日という発行日になっています。「東京逍遥」は

1983年12月発行ですから、同じ年のことで、この時の小沢さんは56歳くらいで

あります。このどちらにも、南陀楼さんがいうところの決めの最後の一行があるの

ですね。

 それがです、2017年3月に刊行となったちくま文庫「ぼくの東京全集」に収録

された「新宿駅構内時計のこと」では、この最後の一行がさくっと消えているので

ありますね。この文庫を作るときに間違って消してしまったとは思えないので、こ

れは小沢信男さん(当時89歳)が、この最後の一行は言わずもがなということで、

削除したのでありましょう。

 小沢さんは、大げさな言い回しとか、肩に力の入った表現を好みませんでした

ので、89歳の小沢さんは、56歳の自分の書いたものを青いなと思って、手を入れ

たのでしょうが、南陀楼さんは、それを残念がっているようにも思えます。

 この中公文庫で「新宿駅構内時計のこと」で読まれるときには、最後の一行が

消された版もあるということで、読んでみてくださいです。