なんとか間に合ったか

 本日に作家の宇能鴻一郎さんが亡くなったとの報道がありました。

 当方が学生時代には宇能さんは、すでに人気作家となってたくさんの作品を

発表していたのですが、そのせいもあってか、宇能さんの初期の作品はほとんど

目にすることが出来ずでありました。

 ただただ宇能さんの芥川賞を受けた「鯨神」の古書価が高いということだけ

が聞こえてくるだけでありました。

 この場で話題にしたものでは、2016年にありましたです。

vzf12576.hatenablog.com 2011年の平松洋子さんの「野蛮な読書」を、この頃に入手、そこで「宇能鴻一郎

私論」というのがあって、これに驚いたことです。 

宇能さんの熱心なファンには、女性の方がいらして、こういう方たちのあと押しが

あって、宇能作品が復刊することになりです。

 当方は、宇能さんの短編集が新潮文庫に入ったことで、やっと読むことができた

のですが、多くの人は、当方と同じでありましょう。

vzf12576.hatenablog.com

 今回亡くなって改めて生年などを確認しましたら、昭和9年とありますので、これは

かの大江健三郎さんと同学年になります。宇能と大江、どちらもほぼ同時期の東大

文学部に在学し、小説に取り組まれていたのでしょう。

 もちろん先に世にでたのは大江さんのほうでありまして、宇能さんが芥川賞を受け

るのは、大江さんよりも4年後でありました。大江さんは、それからも純文学一筋で、

宇能さんは1960年代後半から別の路線へと進むことになるのでした。

 宇能さんが大江さんのことをどのように思っていたのかはわかりませんが、同時代

にすごい人がいたら、同じ手法では勝負にならないと思っても不思議ではないことで

す。

 熱心な女性ファンと、令和の2冊の新潮文庫のおかげで宇能鴻一郎さんの晩年は、

良いものとなったことです。