本日に「ちくま」9月号が届きました。このところの「ちくま」のお楽しみは
斎藤姉妹の連載となります。
特に、斎藤真理子さんの連載「読んで出会ったすごい人」は、ここのところ
毎月ヒットが続きまして、このような連載はめったにないことです。
5回目(6月号) 東峰夫 「ちゅらかあぎ」
6回目(7月号) 「銀行員の詩集」
7回目(8月号) 丸谷才一「笹まくら」
8回目(9月号) 深沢夏衣「深沢夏衣作品集」
ここで取り上げられている作品は、いずれも当方がこの場で言及している
ものでありまして、東峰夫さんのものなど、最近はほとんど話題にならない
ことから、真理子さんの取り上げを喜んだものです。
今月の深沢夏衣さんなどは、さらに話題になることが少なくて、ほとんど
知る人はいないでありましょう。
深沢さんを検索してみても、ヒットするのは書籍の紹介ばかりでありまして
すこしでも人物に言及されているのは、出版社クレインのものと、あとは当方
のものくらいというさびしさであります。
当方が知るにいたったのは、深沢さんが亡くなった年の暮に、小沢信男
さんが「みすず」の連載で名前をあげていたことと、その翌年に深沢さんの
作品集がでることになって、小沢さんから当方のブログで宣伝してと言われ
たことによります。2015年11月のことでしたので、それからでもずいぶんと
時間が経過したことです。
その深沢夏衣さんが、突然に斎藤真理子さんの連載に登場することになり
です。
真理子さんは、まず「メリディアン」というアリス・ウォーカーの小説を読むこと
でつながる本好きの女性たちを話題にし、この作品のことを紹介し、これの翻訳
した藤本和子さんに触れていきます。
真理子さんは、この作品について「アリス・ゥォーカーがリンに経験させたことは
無残としかいいようがない」と書いていまして、相当に大変な厳しい内容のようで
す。
「私は、ヤマグチ フミコがこの小説の巻末に寄稿したエッセイ『黒い女たちの
自画像』なしには、これらのすべてを受け入れなかったかもしれない。
『北米黒人女性作家選』には、津島佑子、森崎和江、石牟礼道子といった人たち
が巻末にエッセイを寄せていた。そして、藤本和子が『メリディアン』をヤマグチ
フミコに託したのは、なんという慧眼だったことだろう。・・・・
これを読んだ当時の私は、ヤマグチ フミコが在日コリアン二世のための季刊
誌の創刊メンバーであり、ときどき一般紙に書評を書いているライターだというこ
としか知らなかった。だが十年後の1992年、ヤマグチ フミコは『深沢夏衣』と
いう名前で小説家になった。」
亡くなって10年が経過して深沢夏衣さんについて、このように斎藤真理子さん
が書いてくれがことにより、深沢さんの作品にふれる機会が増えるとしたら、
これ以上のことはなしですね。
捨てずに残してあった「新日本文学」1992年春号が手元にあって、それが
「深沢夏衣」さんの作品「夜の子供」が一挙掲載されたものでしたので、その
表紙を見てもらうことにです。