夜になってネットをみていましたら、大分合同新聞の見出しが目に入り
ました。
「没後20年 記録映画製作や読書会、精神は今も色あせず」とありです。
この没後20年というのは、大分は中津出身の著述家 松下竜一さんのことで
ありました。最近は、あまり名前を聞くこともなくなっておりましたが、松下さんの
命日となる今月17日に大阪 隆祥館書店代表の方のよびかけで読書会が開催
され、「竜一忌」ということで、来年も祥月命日に読書会を開催することを決めた
とあります。
新聞によりますと、この読書会には50代から70代の13人が集まったとのこと
ですが、こういう時代であるからこそ、松下竜一さんのことを忘れてはいけないと
気持ちであったのでしょう。
松下竜一さんが有名になったのは、「豆腐屋の四季」という真面目に働く町の
若夫婦の日常を描いたもので、これはTVドラマなどにもなって、それこそ若いけ
ども前向きな生き方で、これぞ模範青年という取り上げられたわけです。
ご本人がそのことをどう感じていたかはわかりませんが、1970年代に入って
からは終始一貫して国家や権威に楯突いた人を取り上げることになります。
自らも大分に建設予定となる火力発電所の建設反対運動に関わり、以降は
市民運動と著述を行っていました。
松下さんの魅力はなんでしょうね。頭でっかちな左翼でないこと、中津という
場をはなれなかったこと、世間から非難される人の支援者であり続けたこと
でしょうか。
それこそ忖度には無縁の生き方でありまして、なかなかできることではあり
ませんです。
当方が最初に読んだのは甲山事件について書いた「記憶の闇」でありま
しょうか。それからほどなくして「狼煙を見よ」も同じく文芸誌に一挙掲載され
まして、これも読みました。
今でありましたらネットで炎上するような内容のものでありますが、当時は
共感を持って受け入れられたのでありますね。
本日の大分合同新聞の記事をネットで見て、松下さんの本を久し振りに手
にしてみようと探してみましたら、すぐに見つかったのはダム計画に反対して
土地売却を行わなかった室原知幸さんを描いた「砦に拠る」と父親の晩年を
書いた「ありふれた老い」の二冊でありました。
「ありふれた老い」は松下さんの家族を描いていますので、こちらには
「豆腐屋の四季」につながるもので、後ろ指をさされる人はでてこないので、
安心して読むことができることです。