「波」に詰めパラ話題

 最近に購入して、いまもちびちびと読んでおりますのは、今月に河出文庫

ら新刊ででました若島正さんの「盤上のパラダイス」であります。

英文学の若島さんは、その一方で詰将棋作家としても著名でありまして、この

文庫新刊は、詰将棋に関するものです。

 当方は将棋といえば、駒の動かし方を知っているだけでありますが、それで

も若島さんの詰将棋ものということで、興味津々でした。

ページをめくりますと、当然のこと詰将棋の問題がでてくるのですが、そこの

ところはスルーして、ちょっと風変わりな詰将棋愛好家の人物スケッチを楽しん

でおります。

 この本の元版は将棋愛好家に人気のあるものらしく、当方がこの文庫本を話題

にしましたら、数少ない拙ブログを見てくれる将棋愛好の友人が、喜んでくれて

連絡をくれましたです。

 上に掲げたのが「盤上のパラダイス」の文庫カバー絵でありますが、右にいる

のは「詰将棋パラダイス」という専門誌をやっていた方で、隣に殊勝に正座して

いるのが十三歳の若島さんということなのでしょう。このカバー絵はよろしい

ことです。

 若島さんの本文には、次のようにありです。

「今でこそ将棋が小学校の課外活動にも取り上げられるようになり、そのせいか

詰将棋作家も十代で頭角を現す場合が多いが、当時にはその年齢層の会員は少な

かった。『どうだ、十三歳でこんな作品ができたんだぞ!』といううぬぼれが、

そんな余分なことを書かせたわけた。よく考えてみれば、詰将棋に年齢は関係

ないのだが。」

 詰将棋の専門誌を読むうちに解くほうから、作るほうにも興味がわいて、はじ

めてこの専門誌に自作の詰将棋を投稿したときの話であります。

 この初めて投稿した詰将棋問題は、問題を検証する編集部との間で何度か質疑

が交わされて完成品となるのですが、その時にベテランから稽古をつけられるよ

うな様子が描かれていて、このようにして詰将棋は出来ていくのかと知ることに

なりです。

 当方のような将棋に無縁なものにも、面白く読むことができるのでありますか

らして、詰将棋愛好家にはこの本は幻の名著ということになっていて、古書価格

はとっても高かったとのことです。

 それを知ったのは、新潮「波」の広告欄を目にしたからであります。

新潮のWEBマガジン「yom yom」が、「マニア必読! 詰将棋沼へようこそ」と

いうことで特集を組んでいて、それの宣伝文となります。

詰将棋は、やったことのない人でも、新聞や雑誌で、数字のならんだ9×9の

マス目を目にしたことはあるのでは。12歳だった藤井聡太五冠が詰将棋解答

選手権で優勝したことでも話題になりました。将棋初心者からプロ棋士までを

惹きつける、そんな詰将棋沼にハマった人々のドラマを描いた若島正さん(英米

文学者で翻訳家でカリスマ詰将棋作家で解答選手権の創設者!)『盤上のパラダ

イス』が刊行から35年の時を経て文庫化されました。ファンに支持され、古書

店では超高額で取引されていたこの作品の魅力を大特集します。文庫解説を執筆

した芦沢央さんによる詰将棋を題材にした傑作ミステリ『ミイラ』も特別公開。」

 なんと、河出文庫での復刊が、新潮社のWEBマガジンをして特集を組ませると

いう事態にです。

 すごいぜ、河出文庫