不甲斐ない僕は

 不甲斐ない僕はというのは、今回の直木賞を受けた窪さんの過去の小説のタイト

ルからの借用でありまして、ちょっとピリッとしないものですから、本日は図書館

に走ったという具合につながっていくのでありました。

 基本的には2週に一回図書館に行くのでありますが、今回は先週に引き続きで

あります。というのは、ずっと借りられていた文学界7月号が返却となっていて、

貸し出し可能となっていたのを確認したためでもあります。

 ということで、本日は「西村賢太 私小説になった男」という小特集を読んで

見ることにです。(以前に立ち読みをして、どのような人が書いているのかは、

承知しておりましたが、これなら買わないで済ますかとなったのです。)

 これの売りは、小説のなかで北町貫多からいいようにおちょくられている古書

店主のモデルである朝日書林 荒川義雄さんへの聞き書きがあることで、無名時代

の西村さんについて語っているのが一つで、もうひとつは未完の遺作「雨滴は続く」

に登場する葛山久子さんのモデルである新聞記者さんが、葛山久子という筆名で

寄稿していることですね。

 朝日書林さんは、「彼が亡くなってから、もうすぐ三ヶ月になりますが、彼の

膨大な蔵書をどうするかという仕事と向き合っていることもあり、彼の死を悲しん

だり、大きな喪失感を抱いたりということはありません。」と語っていますが、

これは4月18日に聞き取りしたものとあります。それからさらに4ヶ月は経過してい

ますが、まだまだ蔵書の行き先は決まっていないでありましょうね。

 これまでの西村さんとの取引では、朝日書林さんはほとんど営利を生み出すこと

はできなかったようでありますが、今回もまた同じ轍を踏むのでありましょうね。

西村さんが収集した田中英光関係の収集資料は、朝日書林さんが山梨県立文学館の

館長であった紅野敏郎さんに相談をして館で買い入れしてもらったということです

藤澤清造資料にあっても、同じようにできればいいですが。

しかし、最近の自治体の文学館、資料館はどこも予算がつかなくて困っていますの

で、なかなか価格の折り合いをつけるのは大変かもです。

 とはいっても肝心要の西村さんが亡くなっているのですから、遺族の人は価格に

ついてはうるさいことはいなわいでしょうかね。

 葛山久子さんは、「雨滴は続く」の登場人物であるようで、当方はこれを未読で

ありますので、作中でどのように描かれているのか、これはけっこう人気がありま

して、いつも予約が三人くらいはいっていまして、だまっていますと年内には手に

できないようでありますが、まあいっかです。