いよいよ残り少なく

 ここのところずっと読んでいる柚木麻子さんの「らんたん」はいよいよ残り

少なくなってきました。

 恵泉女学園創立者である河井道さんを中心とした女性たちの物語でありま

して、明治に始まって、先の大戦後に新憲法で男女平等と位置づけられるところ

まで来ると、終わりが見えてくるようです。

 これまでのところで、ぽつんぽつんと登場してきた市川房枝さん、加藤シヅエ

さん、柳沢白蓮さん、村岡花子さんたちが、大戦後に顔を揃えるようになりま

して、大河小説の趣であります。

 戦時中の戦争協力についても書かれていて、河井道さんであっても神格化が

過ぎていないのがよろしいように思いました。

 当方にとっては、なによりもこのようなことを書きそうになかった作者による

というのが新鮮でした。こういう女性の友情の物語は、女性作家にはお手のもの

であるでしょうが、それに時代をからめ、幅広い社会を描いていることに感心し

ました。

 これはおすすめの一冊であるなと思っておりましたら、本日の新聞夕刊の回顧

2021「文学 私の三点」では鴻巣友季子さんがこの「らんたん」をあげて

いました。

 当方がこの作品を知ったのは、鴻巣さんの時評によってでありますが、当方が

読んでいる作品が、今年の三点にあがったのはずいぶん久しぶりのことでありま

して、これはうれしいな。

 この作品が、今、この時代に発表されたことの意味なども考えながら、あと

すこしの残りを読んでみることにします。

 ひょんなことで入手した「恵泉女学園五十年史」というのもあることですから、

これにも目を通してみることにいたしましょう。