小沢信男さんの遺著となった「暗き世に爆ぜ」(みすず書房)が、本日に届き
ました。この本が入ったけどと言われて、急がないのでそのうち送ってよとお願
いしてあったものが、送られてきたものです。
届いてこの本を開くと、このあと小沢さんの新刊を手にすることはないのだな
と、ぐっとさびしくなることでありました。もうすこし届くのがゆっくりでも
よかったかと、わけのわからないことを思っております。
それにしても、「暗き世に爆ぜ」という書名は、どこからでたものであったの
かと思っていたのが、まったく小沢買いの小沢知らずでありまして、本当に迂闊
なことであります。
この本には、もちろんそれについての種明かしがあるのですが、それを見るま
でもなくで「暗き世に爆ぜ」ねと知ったかぶりをするのが、当方のやり方であり
ました。ほんとこれを忘れてはいけませんね。
数年前にある方と話をしておりまして、その方の前任地が香川県綾川町という
ところと言われ、出身の有名人には宮武外骨がいますとの話に、宮武外骨さんの
お墓には句が刻まれた石柱がたっていて、その句は小沢信男さんによるものなん
ですよねと知ったかぶりをしたのであります。
そのことを当方は、どこで知ったものであるのか、小沢さんがどこかで書いて
いたものを目にしたと思うのですが、これがはっきりとしません。
この本には、2013年に発表された「俳句的日常」という文章が収録されていて、
そこの「暗き世に爆ぜ」という章があるのですが、これではなしにです。
本日はちょっと見つける事ができそうもなさそうですので、こちらの本から、
「暗き世に爆ぜ」の由来を引用です。
「 なにやら読みにくい筆跡で『宮武外骨の墓をたずねる』と前書きして
暗き世に爆ぜかえりてぞ曼珠沙華 信男
なにを隠そう私の句です。昨年の外骨忌のときから吉野さんに口説かれて、
意を決してへたくそな文字をつらねて差し上げたら、さすが石工の職人芸、
そのまま巧みに刻まれた。・・・・
『ははぁ』と隣で松田哲夫さんが『それでこれが小沢さんの、唯一の句碑で
すか』。
そうです。名刺受という実用の具に、相乗りさせていただいのがミソなので。
『つまり小沢信男の』と松田さんが念を押す。『唯一の文学碑なんだ』」
「人は生きているように死んでいる」は小沢信男さんの名言でありまして、
ボスにならなかった小沢さんには、没後に文学碑をたてようなんて動きもないは
ずでありまして、それだけに貴重な「暗き世に爆ぜ」が刻まれた名刺受である
ことです。