一昨年の7月8日に亡くなった一人暮らしの老婦人は母の友人でありました
が、昭和7(1932)年のお生まれでした。昭和7年生まれというのは物心
がついた時には戦争にむかってまっしぐらで少国民と呼ばれた世代であります。
小学校は国民学校に、卒業して女学校や中学に進学した人たちは、そこで敗戦と
なって、その後に在学していた学校は新制にかわって新制高校を卒業して、戦後
民主主義の担い手として世にでることになりました。
ほとんど一身にして二生を経るという感じでありますが、昭和7年前後にお生
まれの方たちの意見には聞くべきものが多いようです。
先日に話題としていた小林信彦さんは昭和7年でありますし、本日に手にして
おりました文庫本の著者 内橋克人さんも昭和7年とありました。
今年の春までは、朝のラジオでお声を聞くことができたのでありますが、最近
は番組から声がかからないようで、ちょっとさびしく思っております。
手にしている文庫は、元版が2009年に刊行されたものとのことですが、内橋
さんは2003年に「貧困マジョリティー形成」ということで、次のように記し
ています。
「インターネットは『マネー」の自己増殖を可能にする電子商取引の舞台であり、
グローバリズムはそれを下支えする制度である。インターネットとグローバリズム
は密接不可分、表裏の関係にあるわけだが、次の問題は、両者が世界規模に浸潤、
普遍化する結果、世界はどのような変容を迫られつつあるのか、ということだ。
結論からいえば、それが貧困マジョリティーの形成であり、言葉を換えていえば、
ミドル層の崩壊そのものである。
グローバリズが要請する無際限の競争にさらされてミドル層が二極分解していき、
そのうちの多数派が貧困層に向けて加速度的に溶融しつつあるのが、現在の世界の
様相である。」
これが記されてから18年が経過して、内橋さんの言っているとおりとなってい
るのですが、内橋さんの発言は人々に届きにくくなっているのではないでしょうか。