いろいろな断面が

 昨日に購入した鈴木孝夫さんの「言葉のちから」(文春文庫)を手にしていま

すが、いろいろなことが書かれていて、自分に都合の良いように読める本でもあり

ます。鈴木孝夫さんは、なかなか一筋縄ではいかない人でありまして、この本に

書かれていることをどのように読めばよろしいのでしょう。(そのまま読めばいい

といわれそうです。)

 巻頭に置かれているのは、「日本の誇りを取り戻す」(平成年11月の講演がもと

ですが、その時のタイトルは「21世紀は日本の時代」)というものですが、この

表題などちょっと前までの日本の総理大臣が口にしそうな言葉でありまして、あの

総理大臣は、鈴木孝夫さんの思想に共感したのかと思ったりです。

「振り返ってみると、今から百年前の西暦1900年において、日本以外に欧米の保護

国や植民地でなかった国は、全世界でわずか七つしかなかった。それを日本が立ち

上がってひっくり返した。だから日本の大東亜戦争はほとんど全世界を掩いつくす

ばかりになっていた世界の西欧化を日本化する大きな力だったのです。その最初の

きっかけは日本が日露戦争に勝ったことです。」

 日露戦争で勝ったことが、その後の日本の進路を誤らせたという考えの人もいる

のですが、鈴木さんは、これがトルコやインドネシアなどのその後にインパクトを

与えたと記しています。

 これに続いて、次のようにあります。

「それを今の日本人はすっかり忘れてしまって、戦争に勝ったアメリカの一方的な

言い分を信じて、日本人は悪いことをした、日本は悪い国だと自虐史観を持つよう

になってしまった。だから子供は親を尊敬しない。先生に権威を認めない。学校、

国歌、国旗は駄目という具合に社会の崩壊が始まったのです。つい半世紀前の日本

のとった行動を正しく伝える信念のある日本人が非常に少ないからです。」

 だから子供は親を尊敬しないと書かれると、あらそうなのかなと思ったりですし、

自虐史観を持つようにとなったといわれると、先の大戦での帝国軍隊のやり方は、

けっしてほめられるものではなかったのではないかと思うのですが、このあたりに

ついての鈴木孝夫さんの発言は、どのように受け止められているのでしょう。

 この文章は、日本は欧米化を目指すのではなく、「むしろ外の世界を日本の力で

日本が正しいと思うような形にもっていく」ことを目指すべきと締められるのです

が、これもいま流行りの「日本すごい」のさきがけのようにも思えることです。

言葉のちから (文春文庫)

言葉のちから (文春文庫)

  • 作者:鈴木 孝夫
  • 発売日: 2006/11/10
  • メディア: 文庫