図書館から借りている本の返却日となりましたので、経本をめくるように
ぱらぱらとページに風をいれることになりです。
本当にえらくマニアックな本でありまして、こういう本を読むことができる
のは図書館のおかげでありますね。図書館は、紙に文字がプリントされたもの
を綴った本を扱っているのですから、印刷とか活字についてのものがあっても
いいですよね。関心を持つ人はすくないかもしれませんが。
本日、目にしていてへえーと思ったのは、「二字、三字続きの平仮名活字の
制作」というところにあったものですが、活字というのは、一つずつ独立して
いるものと思ったら明治の初めには「続きの平仮名活字」が作られていたとの
ことです。
「明治八年に生きている人々の日常の文字生活は毛筆手書きの連綿体が基本で
す。連綿体に慣れた人々にとっては一字ずつの活字で組まれた文章を見たり、
読んだりするには戸惑いと違和感があったと思われます。」
ということで「続きの平仮名活字」で印刷がされるのですが、驚くのはその
あとにでている話であります。
「毛筆手書きを再現する目的で、連綿体の平仮名活字を初めて制作したのは、
残念ながら日本ではありません。
1874(弘化四)年、柳亭種彦の著作が突然ウィーンで刊行されました。
もちろん日本語での刊行です。印刷刊行はウィーン王立印刷局です。」
このウィーン王立印刷局版の柳亭種彦のページが掲載されているのですが、
これがびっくり仰天の出来栄えなのですね。
「復刻版と原版を比べてみると、原版の雰囲気を壊さずに、それも金属活字を
使って忠実に再現しようとしていることがわかります。・・・
これだけの字種を使いこなして組版を行うには、日本語と日本文字に造詣の
深い人物がいなければ難しい。これをみても当時のヨーロッパにおける日本語
学の水準の高さと、再現に従事する技術者の高い技術力を知ることができます。
そのような下地があってはじめて可能な復刻であったと思います。」
江戸時代の話でありますので、日本は鎖国中でして、オランダにしか門戸を
開いていなかったのですが、ヨーロッパはつながっていたのでありますね。
それにしてもハプスブルグ家が支配した帝国の力はすごいことです。