まるで縁がなかった

 図書館から借りている本の返却日となったことから、あわててページを

めくっています。今借りている本は5冊でありますが、そのなかにはほとんど

借りられることのないような本もありますので、それはちょっと置いといて、

予約が入ってきそうなものを手にすることになりです。

 これまでほとんど縁がない作家さんの随筆選集を借りています。編者が日下

三蔵さんであることと、装画・装丁が美しいので思わず手が伸びたものです。

皆川博子随筆精華 書物の森を旅して

皆川博子随筆精華 書物の森を旅して

 

 そもそも皆川博子さんて誰というのが、当方の認識でありまして、これまで

皆川さんの小説はまったく読んだことがありませんでした。検索をかけて1930年

生まれであることがわかったくらいです。

 それにしても、このエッセイ集のあとがきをみても、90歳になる方が書かれた

ものとは思えませんでした。

 1930年1月生まれというのが戸籍上であるようですが、この年齢は女学校までは

旧制の世代でありますね。東京女子大学に進学したとありますが、これは何年の

ことかわかりませんが、ほぼ同じ頃に東京女子大に進学したのが矢川澄子さんと

多田智満子さんでありまして、この方々は、どこかで一緒に何かしていないかと

ユリイカ特集号で矢川澄子さんの年譜をチエックしてみることになりです。

 なんとなく接点はありそうですが、ちらっとみたところでは皆川さんの名前を

見出すことはできずです。ちょっと活動の場が違ったようです。好みはかぶって

いるところがあるのにな。

 皆川さんは、次のように書いています。

「目にする活字本がほとんどすべて面白く、心に沁みこみ、ほかのことはうっちゃ

らかして、ひたすら本の虫で過ごしたのは、小学生から旧制女学校の二年、年で

いえば、十三、四のころまでで、その後数年、本に飢えながら、手に入らないと

いう時代が続いた。・・

 子どものこと雑多に読んだ本は忘れがたいものが多いが、なかでもピランデルロ

の『作者を探す六人の登場人物』は、初めて出会った前衛劇で、もちろん十やそこ

らの子供は、前衛という言葉も知らなかったけれど、迷路のなかを引き回されるよ

うな陶酔感に酔った。」

 70歳に手の届きそうな当方は、いまだにピランデルロを読んだことはなしであり

まして、それにしても「十やそこらで陶酔感に酔う」ことができるの作品なので

しょうか。もっと若くにこういう文章が書かれていたら、嫌味な人と思うのですが、

なんといっても、当方はかって早熟であった九十歳の女性が、過去を振り返ってい

るのだと、すこし余裕を持って読むことができることです。

 そしてまた次のようにも。

「偏愛の作品は、シュルレアリスムと呼ばれるものに多いが、それにしても、

ゴンブロヴィッチは抜け落ち、シュルツは掌中の珠と残り、ヤーン、ドノソは

溺愛してもボルヘスはすべり落ち、リアリズムの極北にあるヴェルガが至宝の

一つとなるという気ままぶりである。」

 このように書かれている作家さんが、どのような小説を発表しているのか、

ちょっと手にしてみようかしらんです。