知らなかった

 ここのところBSなどでやっているNHK朝ドラマの再放送を見て楽しんで

います。舞台を明治から大正、昭和の初めころのものは、その昔に制作され

たもののほうが、ずっとリアリティがあると思うからです。

 昭和の戦前くらいに江戸時代を舞台にした小説を書いていた作家さんは、

そろそろ時代考証があやしくなっていて、そうした作家さんが三田村鳶魚

さんなどを見かけたら、行き合わないように姿を隠したなんてことがいわ

れましたが、最近は、そこまで時代を遡らなくても、ほとんど戦時中の

雰囲気を再現することができなくなっているようです。

 最近まで放送していた「はね駒」は、明治になってそんなに時間がたって

いないころがスタートでしたが、駅逓の雰囲気などはこういうものであった

のかなと思いつつ、セットをみておりました。

 今やっている「澪つくし」は、大正の終わりから昭和初年でありますが、

銚子という港町の醤油屋さんが舞台になっています。(これからは違った

舞台になるのですが)

 ここでは、結果として妻妾同居という現実が描かれています。作者は

ジェームス・三木さんでありますから、割り引いて見なくてはいけないかも

しれませんが、その昔(明治から大正にかけて)の家族の話を見たり、聞い

たりしますと、それに類した話が存在するのがわかります。

 先日手にした富士正晴さんの本には、明治三十年代の話として勝海舟(麟太

郎)未亡人 たみという人の逸話が紹介されています。

 「未亡人たみは自分の骨は麟太郎の墓に一緒に入れてもらいたくない、数年

前に死んだ温良で立派であった長男の小鹿の墓に入れてもらいたいとキッパリ

したことを遺言とした。・・

 麟太郎はたみ以外の何人かの女に子を産ませている。まあ、それくらいは

そのころの風俗として(今でも内々はそうだが)珍しくもない。

しかし、海舟の座談などをよむと、老人海舟は自分の家の女中(実に美しい

衣装をつけさせたのが行儀見習いに来て沢山いた)には全部手をつけている

あるんだと客に向かって自慢しているのである。」

 勝海舟が亡くなったのは1899(明治32)年でありますから、これはまった

くの例外ではなかったのでしょう。

図書館から借りている蜂須賀正さんについての本にも、「二十世紀の前半に

おいても江戸時代よりは希薄になっていたかもしれないが、旧将軍や大名だけ

でなく、政財界人をはじめ資産家に側室がいるのは当然のことと考えられて

いた時代であったのだ。つまり、正室以外に側室をおくことは問題ない。

しかし、正妻になるのは、家柄がつりあった未婚の女性だとする社会通念で

ある」と記されていました。

  というようなことを頭において「澪つくし」をみてみます。

醤油屋主人は津川雅彦、その病弱な妻 岩本多代 長女 桜田淳子で、主人の

おてつきさん(かっては使用人の女中)が加賀まりこで、その娘が主人公の

沢口靖子となります。

 なかなかわかり良いキャスティングでありますね。別に暮らしていた愛妾

さんを娘ごと引き取って、一緒に暮らし、その後正妻が亡くなったのを機に

愛妾さんは正妻となるようですが、そのほかにも主人のところの女中には、

お手つきを思わせる女性がいて、火花がとんでいます。

 その病弱な正妻役をしているのが岩本多代さんで、当方は昔からひいきで

ありまして、この番組にでているのを見てうれしくなりました。そういえば、

ちょっと前に話題になっていた「ナギサさん」にもちらっと顔をみせていま

した。

 岩本多代さんいいよなと思って、検索をかけてみましたら、まさか8月19日

に亡くなっていたとありました。あらま久しぶりに見かけてよかったと思った

ら、その時には亡くなっていましたか。

 岩本さんは80歳ということですから、まだまだ活躍できましたでしょうに、

なんとも残念なことであります。

 まだすこしは、TVで岩本さんを見ることができそうですから、それを録画

しておきましょう。