出版社のPR誌の最後に届くのが「みすず」でありまして、これが届きます
と新しい月が始まったという気分になります。
「みすず」では楽しみにしている小沢信男さんの「賛々語々」が116回となり
ました。今月は「秋刀魚」ということで石田波郷さんの句を取り上げていま
す。
「十月や顳かみさやに秋刀魚食ふ 波郷」
小沢さんが引いている句では、こめかみが漢字で表記されていまして、これ
をふりがななしで読めたらかなりの通と書かれていました。
どうして「顳かみさやに」であるのかですが、これは秋刀魚を食べての印象で
あるとのことです。
秋刀魚を食べて顳かみに感じるのは、腹の部分を食べてのことですね。最近
はお魚を食べるときには、身をほぐして食べやすくしていますので、苦味を
感じる腹を口にすることはないでしょう。
ということで、せっかくの石田波郷さんの句でありますが、どんどんとこの
よう句は味わうのがむずかしくなりそうであります。
秋刀魚の不漁がもう何年も続いていて、値段が高止まりしているのも、秋刀魚
で「顳かみさやに」といかない理由でありましょう。