やっと出番が

 図書館から一度に何冊か借りてくるのですが、一度に併読できるものは、

そんなに何冊もないので、同時に小説を二冊借りてきましたら、一冊が

読み終わるまでは、次にかかることは難しくなります。

 それならば、小説は一冊、エッセイは一冊、その他一冊という具合に

すればいいのになと思いますが、追い込んだほうが読めるのでありますよ

ね。

 長くとりかかっていた金石範さんの小説の読みが一段落したので、ずっ

と前から借り続けていたものを、やっと読むことになりです。(小説を同時

に併読は難しいと記しておきながら、ちゃっかり「日本蒙昧前史」を読んで

いたのでした。)

 それはさて、昨日から読み始めたのは笙野頼子さんの「幽界森娘異聞」と

なります。7月に笙野さんの「静流藤娘紀行」を読んでいたら、これが読みた

くなったのであります。

幽界森娘異聞 (講談社文庫)

幽界森娘異聞 (講談社文庫)

 

  当方が図書館から借りて読んでいるのは、2001年7月刊行の元版となる

単行本となります。「群像」に連載されていたのは2000年ですので、すで

に20年が経過しています。

 20年前でありますからアベノなんとかもありませんので、この作中には

嫌いな政治家への悪罵もみられません。そういうのが好きな人には物足り

ないかもしれませんが、作品としては、こちらのほうがまともで読みやすい。

 まだ頭のほうのすこししか読めていないのですが、本日に読んだなかに

あったくだりです。

「森娘、それは生きても死んでも少数から愛される作家、死後十二年たって

も一昨年からは、読者のホームページまで出来てる程。そこのアクセス件数

は二年未満なのにもう二万越えた。

全集は今は手に入らないけど、マニアが愛蔵してしまうからなかなか出て来

ないけど、でもインターネットで見たら古本サイトに極少。値段は五万五千

とかで定価とほぼ同じ位。でも何よりそれとは別に、『生きてる』文庫本、

戦前にあったものは殆ど全部、文庫で手に入る。というか絶版になった新潮社

の『甘い蜜の部屋』と『贅沢貧乏』は、それぞれ筑摩書房講談社の文芸文庫

にある。」

 森娘が亡くなって33年となり、上のように笙野さんが書いてからも20年で

すが、全集の古書価格こそ、すこしは下がっているとはいうものの、まだま

だきちんとした値段で取引されているというのは、すごいことで、「生きて

いる」文庫本についても同様であります。

 笙野さんの文章の続きには、次のようにもありました。

中野翠群ようこ森茉莉が好き。私の森娘と同じ人かどうかはよく知ら

ない。元祖やおいと言ったのは中島梓だったか、そうか森娘の方ではなくて

森茉莉の方だ。

 森娘は森父文章を耳で取って、志賀直哉はあまり読まず、河野多恵子

富岡多恵子金井美恵子白石かずこから愛されていた。全員森娘より年下で

ある。」

 「私の森娘と同じ人かどうかはよく知らない。」というところが笙野さん

流でありますね。