遠別少年死す

 本日の新聞に装丁家 坂川栄治さんが亡くなっていたとでていました。

当方よりも二歳くらい下になりますが、北海道生まれということもあって、

気になる存在でありました。

 装丁家としての坂川さんの作品は、目にはしているのでしょうが、あまり

意識して購入することはないようです。たぶん自宅を探せばあるのでしょうが。

図書館から借りている「<美しい本>の文化誌」でも取り上げられていました。

 この本の巻末にある坂川さんの紹介から。

「幅広い活躍を繰り広げている実力派ブックデザイナー。ヨースタイン・ゴル

デル『ソフィーの世界』などのベストセラー本の装幀が多いことが特徴。

作品集に『本の顔 本をつくるときに装丁家が考えること』。写真家としても

知られる。」

本の顔 本をつくるときに装丁家が考えること
 

 臼田さんが本文中で、坂川さんに言及しているのは、菊池信義さんの方法

との対比においてです。

 菊池さんは事前に「テキストを十全に読み込むことで知られる。」と紹介し

たうえで、そうではない装丁家として坂川さんに言及しています。

「ベストセラーものの装幀で知られる実力派・坂川栄治らがいる。坂川はテキ

ストとの距離感が大切であり、深入りを避けるためにもそうしているのだと

いう。もちろん、事前に担当編集者から十分に説明を受けているのだが・・。

これはどちらがよいとか悪いとかの問題ではなく、それぞれの装幀者の判断

だろう。」

 「テキストとの距離感が大切」というのは、そのとおりでありますね。

菊池信義さんだからよろしいのであって、下手くそなデザイナーさんでありま

したら、うんざりしてしまいますでしょう。

 とここまでは、装丁家としての坂川さんについてで、もう一つは北海道の

すごい田舎で育った文筆家としての坂川さんについてです。文章を書く人で

すごい田舎で育った人というのはいないことはないのですが、その中でも

坂川さんの世界は、すごいものであります。

 当方も子どもの頃は田舎暮らしでしたが、バスで1時間弱で大きな町にいく

ことができました。それと比べると坂川さんは町なかで暮らしたとはいっても

遠別町という、ほとんど北海道に住んでいる人でも足を運んだことがないと

いう道北の小さな町で成長し、その地での子ども時代のことを文章に残して

います。

遠別少年 13のストーリーズ (光文社文庫)

遠別少年 13のストーリーズ (光文社文庫)

  • 作者:坂川 栄治
  • 発売日: 2007/11/08
  • メディア: 文庫
 

  本日は、この文庫本を引っぱり出してきて、「山おっちゃん」という文章を

読むことになりです。当方の子ども時代も、このようなところに住んでいる人

はいたのでありますよ。