図書館から借りた土田道具店三代目 土田昇さんの「刃物たるべく」を読み
ついでいます。
職人さんの芸談の趣がありですが、土田さんは道具店のご主人でありますが、
自らも鋸の目立職人でありますので、まだ若い職人さんが自分の先代、先々代
の時代の職人さんの仕事ぶりを伝えることになっています。
どのような読者を想定しているのかなと思いますが、思ったよりもずっと歯ご
たえがあって読みにくいのでありますよ。思わず、もっと平易に書いてねとこぼ
しをいれたくなること。
この本ではどのようにして家業を継ぐことになったのかはわかりませんが、こ
の本には、次のように書かれています。
「鋸や鉋やのみがあふれかえる大工道具屋に生まれながら、それらの詳細などま
るで知らないまま、はじめて切出小刀を研いでみたのは、高校卒業後、家業を継
ぐことになって少したった十九歳のときでした。・・・・
高校はかろうじて卒業したものの、受験勉強なるものをまったくした覚えがな
く、将来への希望も展望もまるで形になっていませんでした。学歴を得て社会に
出るというシステムからスピンアウトしていました。逃げ込む先は、図書館、映
画館そして目的のない徘徊でした。不安な心情をかかえて、手には何も持たず、
何もふれずに過ごしていました。」
道具をめぐる話の間に、このような自分の話や家族介護の話がまじっています。
まあこれが必要かどうかですが、土田さんは、どうしてもこれも書いて置きたかっ
たのでありましょう。
土田昇さんは、ここ何年か「みすず読書アンケート」にも登場するのですが、
今年2月の号で土田さんがあげているなかには、次のような本がありです。
これへのコメントには、「かって高校生の頃たてつづけに観たボリビア映画が
エイゼンシュテインの『メキシコ万歳』よりずっと魅力的に思えた体験」とあり
ました。
この本は「将棋の駒製作職人が貸してくださった本」とありました。
それにしても、このような本をあげるとは普通の道具屋さんではないですね。