再開した図書館から

 今週から再開した図書館へといって、本を借りることになりです。一月

以上も手元においてあったのに読むことができていなかったものも、返却

することにして、すこしリセットです。

 さすがに一ヶ月も新入荷資料のところを見ていなければ、目新しいもの

が目につくことであります。これらのなかから、何冊か借りることになり

です。読めるか読めないかは借りてから考えてもいいのですよ。これが

買うのと借りるのとの違いでありますね。

 先日に書店へといったときに、見当たらずであった本がありまして、これ

はありがたく借りてきました。

椿井文書―日本最大級の偽文書 (中公新書 (2584))

椿井文書―日本最大級の偽文書 (中公新書 (2584))

  • 作者:馬部 隆弘
  • 発売日: 2020/03/17
  • メディア: 新書
 

  新聞の読書欄で取り上げられていて、興味を持ったものですが、若い学者

さんによる資料調査の報告書。とっても読みやすくて、頭にはいるかどうか

は別にして面白い。

 歴史学者としては、こういう仕事に時間を取られていたら、道草のような

感じにとられそうでありますが、しかし誰かがこのようなことをまとめてお

かなくては、こういう偽文書によって歴史が語られたりもするということで

書かれることになりです。

 普通でいけば、偽文書を作る人はえらくいやな人間のように書かれるので

しょうが、この偽文書を作ったとされる方は、なかなか魅力的に描かれて

いて、それも含めて地域の歴史に筆者が愛情を持っていることが伺えます。

 しかし、それにしてもものすごい量の資料を残したことで、これを活用

して地域の歴史を書いた自治体があったとあるのも不思議ではありません。

そういうことでは、地域に残る資料の扱いには注意が必要ということです

ね。

 当方の住む、北海道に関してはこの椿井さんは未踏であったかと思いま

したら、次のように記されていました。

「椿井政隆は、若いころに蝦夷地に赴き、現地での見聞を踏まえた絵図の

草稿を作成し、所持していたという。そうしたところ、文化四年の秋に、

膳所藩士の遠藤氏、松元氏、沢氏の三人が藩名を受けて蝦夷地に赴いた。

文政五年の『膳所藩分限帳手控』から、遠藤家と沢家は禄高七十石と確認

できるので、彼らは中級家臣のようである。翌年夏に三人は、松前の住人

が秘蔵する蝦夷地の絵図を持ち帰った。

 この『蝦夷国輿地全図』は、椿井政隆の草稿と松前で得た絵図、そして

三人の見聞を交えて作成されたものだという。椿井政隆自身が蝦夷地に

赴いたのというのは偽りである可能性が高いが、膳所藩士と交流を持って

いたことは事実であろう。」

 偽文書作者である椿井さんが蝦夷地に来ていた可能性は、限りなくゼロ

に近いのでありますが、来たことがないと断言できない限りは、「赴いた

のは偽りである可能性が高い」としか、歴史学者さんはいえないのであり

ますね。

 これの「蝦夷国輿地全図」は、函館図書館に収蔵されているとのことで

す。どこまでが松前の絵図によるもので、どこからが椿井さんの草稿によ

るものであるのか。北海道で、椿井さんの文書が発見されたら、話題にな

ることでありましょう。