こんな人がいたんだ

 昨日にTVを見ていましたら、夜に再放送で「こころの時代」のアンコール番組が

あるといってました。取り上げられていたのは、ハンセン病患者、家族の国家賠償

訴訟弁護団の団長さんでありました。

 図書館から借りたハンセン病療養所の本を読み続けていることもあって、この

番組は見なくてはです。

 当方は、そういう裁判があったことは承知していますし、最初の裁判で原告が勝訴

したときに、当時の首相が上告を断念して、裁判が終わったことは知っておりました。

その裁判の訴えは、ハンセン病の治療薬が国内でも使用されるようになって、ハン

セン病が治ることが確認されることになってからも、らい予防法で隔離政策が継続

されたことを憲法違反であるとしたものです。

 元患者さんたちが、国を訴えるというまでに、本当にすごい時間がかかりました。

なんといっても裁判は訴える人たちが、カミングアウトしなくてはできないことであり

ますし、それを支えてくれる弁護士さんがいなくてはできないことですから。

 このたいへんな裁判を引き受けたのは、大分市で弁護士をしている徳田靖之さん

をはじめとする人たちで、番組ではこの徳田さんに話を聞き、その行動を追うことに

なりです。

 徳田弁護士さんと元患者さんたちの強い信頼関係から、療養所内の生活する部屋

にもカメラがはいりました。ハンセン病の元患者さんたちの写真などは見たことがあり

ましたが、このようなドキュメンタリーで見るのは初めてで、カミングアウトして、ここまで

くるに、この方はどれだけ大変な思いをしたろうかと感じました。

 家族から患者がでたときに大変であるのは、家族、親戚もそうでありまして、患者

さんは、それ以降は別名を名乗り、違う自分を生きることを余儀なくされるわけです。

 ハンセン病であった作家 北条民雄さんは1936年「いのちの初夜」を発表し、翌

1937年に23歳で亡くなるのですが、北条民雄はもちろんペンネームでありまして、

本名が明らかになったのは2014年のことで、没後77年経過していました。

 もちろん、本名公開には家族の同意が必要であったのですが、それには、これだけ

の時間が必要でありました。たぶん、2001年に裁判で結果がでたことも大きく影響

したものと思われます。

 それにしても偏見というのは、人の頭を固くしてしまうことです。

北條民雄 小説随筆書簡集 (講談社文芸文庫)

北條民雄 小説随筆書簡集 (講談社文芸文庫)

  • 作者:北條 民雄
  • 発売日: 2015/10/10
  • メディア: 文庫