眼を疑うことで

 昨日の新聞に掲載となっていた「リーダーたちの本棚」であります。先月に

引き続きでまともな読書人の登場で、へえーそうなのかと驚くというか、眼を疑う

というか、当方がその方に対して偏見を持っているせいでありましょうか。

 この方はおすすめの本の最後に次のものをあげるているのであります。

「近頃は街の書店が減り、良書と出会う場所が少なくなりました。そうした中で

手がかりとしているのが、書評紙『週刊読書人』です。あらゆる分野の本が充実

した書評とともに紹介されており、対談や連載コラムも実に読み応えがあります。

また、少ない部数でも良書の発行を地道に重ねている小さな出版社が意外にも

多いことを、本紙で知りました。一紙で複数の良書に触れたような満足感がある

ので、これも若い人が読むといいと思います。」

 これはご本人が語っているのをライターさんがまとめたものでしょうが、このよ

うに発言するリーダーさんがいることに驚きです。書評文化とか書評紙の重要な

ことを説いていたのは、その昔の丸谷才一さんでありましたが、その世界に近い

人であったのでしょうか。

 そう思っていたら一冊目にあげているのは、次のものでした。

双調平家物語1 序の巻 飛鳥の巻 (中公文庫)
 

 「読書から得られるものは知識の奥の大切な何か。どう自己を確立するか、どう

悔いなく生きるか、といったことへの示唆です。例えば『双調平家物語』は惜しくも

昨年亡くなった橋本治がその筆力を遺憾なく発揮した古典の現代語訳。古代中

国や飛鳥時代まで遡って平家をひもといています。・・・誰にも平等に死は訪れ、

栄えた人もいつかは滅びる。富や権力を欲して何になるのか、自分が納得できる

生き方をすればいいではないか。解釈は人それぞれですが、私はそのような読み

方をしました。」

 いちいちもっともなことでありまして、「橋本治がその筆力を遺憾なく発揮した」

なんてあるのを見ると、あらためて橋本さんのこのようなものを読まなくてはと

教えられるのであります。

 このような記事をみますと、すっかりこのリーダーさんのファンとなりそうでありま

すが、これが一部の人たちからひどく嫌われている人でありまして、それがために

眼を疑うのでありました。

 ちなみにこのリーダーさんは笹川陽平さんで、今年で81歳となるのだそうです。