「趣味の歴史修正主義者」か

 話題になっている「独ソ戦」でありますが、戦史どころか当時の歴史に

疎いわけでありまして、著者の大木毅さんが「歴史修正主義の歪曲を

正し」と記しているのを見ても、なにをどう歪曲しているのかすらわからない

のでありますね。

独ソ戦 絶滅戦争の惨禍 (岩波新書)

独ソ戦 絶滅戦争の惨禍 (岩波新書)

 

 そんなことを思って検索をかけてみましたら、大木さんがこの歴史修正

主義について、わかりよく説明をしているところがありまして、これを見ると

そのことがすこし理解できるようであります。

 どの世界にもマニアというのは存在することで、戦史マニアというのも

いて、その人たちにはシステマチックなかってのナチスドイツ軍というのは

人気があるようです。それがために必要以上にドイツ軍びいきになるようで、

そうした人たちが依拠する歴史読み物(歴史書にあらず)には、とんでも

ない内容のものがあって、それが趣味の歴史修正主義につながっていくと

いうことのようです。

 当方はナチスドイツとか、その軍隊についてはほとんど知るところがない

のですが、大木さんの著作はまずはドイツびいきにむけて牽制球をなげる

ことになりです。

「1979年代以来、日本人の独ソ戦理解を決定づけたのは、こうした回想録

をはじめとする、さまざまな戦記本であった。なかでも影響力が大きかった

のは、パウル・カレルであろう。ナチス政権のもと、若くして外務省報道局長

の要職に就いた人物だ。

 戦後、本名や経歴を隠して、『パウル・カレル』の筆名で書いた著作は、

日本でもベストセラーとなり、独ソ戦に関する研究所がほとんどなかった

時代に、広範な読書を獲得した。研究者のなかにも『歴史書』として依拠する

者がいたほどである。・・・

 カレルの描いた独ソ戦像は、ホローコーストの影さえも差さぬ、あたかも

無人の地で軍隊だけが行動しているかのごとき片寄った見方を読者に与える

ものであった。」

 パウル・カレルという名前を聞くのも初めてですが、大木さんはこの人が

書いたものを70年代に読んで、ナチスドイツ軍にもいいとこがあったと思う

なんて思わさせるのが、歴史修正主義の始まりということですね。

 以下の大木さんのページがとても参考になりました。

synodos.jp この国においても、歴史修正主義というのが横行でありますが、先日は

失言を常習とする大臣が持論を開陳していました。この国は、古来から

単一民族からなる国家というのが、この方の持論でありますが、たしかに

ずっとそのように思いこまされていたわけでありますからして、歴史修正と

いうのは敗戦後の認識であって、俺の知ったことかといわれると、現在の

当方が歴史修正主義者といわれそうです。 

 ということは、歴史修正主義が必要なときもあるということか。