先日の持参本

 先日のコンサートなどへの遠征は、できるだけ身軽にということで、かばんを持つ

こともなしでありました。上着に手帳と薄い文庫本をいれて手ぶらでいったのです

が、この本にしようと思ったときには、あまり意識をしなかったものの、当日の

コンサートと深くつながっていることに、あとで気づくことになりです。

 山下達郎さんのコンサートでしたからして、話のなかで大瀧詠一さんのメガネに

かなってバンドとしてデビューすることになったことや、これまでつながりのあった

楽家たちが今年に亡くなったことについて言及です。

 そのときに名前はでなかったのではありますが、当日のライブでも「SUGAR

BABE」の思い出にといってから「DOWN TOWN」を歌うところで、そうだ本日の持参

本の父親は「SUGAR BABE」のメンバーで、たった一枚のアルバムにも参加して

いる方であったのだと思ったのであります。

vzf12576.hatenablog.com ということで、持参していたのは寺尾紗穂さんの「南洋と私」でありました。

南洋と私 (中公文庫)

南洋と私 (中公文庫)

 

 ユニークな育ち方をした寺尾さんでありますが、音楽と文筆の二刀流です。

この本でもそのユニークさの片鱗を感じることができることであります。この本は

日本統治時代に南洋といわれた島々での、人々の記憶をたずねる旅を記録した

ものとなります。(本文と同じくらいの注がついていて、こちらを読みでがありま

す。)

 統治時代に日本の公教育を受けた人たちは、その時代をどのようにとらえて

いるのかですね。それが本筋ではあるのですが、あちこちにプライベートなこと

が挟み込まれていまして、これがまた興味本位に面白い。

 南洋にいって南十字星を見てみたいと思った話からの続きにあるくだりです。

「高校二年の三月、私はサザンクロスを求めて花屋を何軒もまわった思い出が

ある。オーストラリア原産のピンクの花をつける植物だ。花が星型で南十字星

思わせるので、同じ呼び名を与えられたのだという。・・三月というのはついてい

る花もほとんどなく、お店にもあまり置かれない。ようやく見つけて鉢植えも、

花はほとんどついていなかったと思う。それを私は当時一番好きだった人の

誕生日にあげた。地学の先生で、父親より年上、奥さんも子どももいたけれど、

そういう状況に反比例するみたいに、どうしても好きだった。」

 おいおい大丈夫かというようなエピソードでありますが、寺尾さんはこのよう

なセンスのかたなのですね。この「サザンクロス」という花は、北国の当方のとこ

ろにも鉢であるのですが、近所のお祭りの縁日で売れ残りを買ったものですが、

冬は室内に入れることによって、買ってから三年を経過しても健在であります。

我が家のサザンクロスの写真をさがしたのですが、見つからずでしたので、

ネットで販売されているサザンクロスの写真を拝借することとしました。

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