待ち時間にブックオフ

 本日の午前に家人を皮膚科へと送りに行って、診察を受けている間、近くに

あるブックオフで時間をつぶすことになりです。えーっブックオフへと行くのと

いつもであれば言われるところでありますが、本日は事情が事情であります

ので、そうしたこともなし、とはいっても本日の予算も財布に入っている小銭の

範囲でありまして475円ほどでありますが。

 さてさて、本日の収穫であります。

 黒井千次さんの小説を購入したのは、これがはじめてであります。読んだこと

もなかったのですから、これまで縁がなかったということですね。

黒井さんは1932(昭和7)年生まれで、黒井さんのちょっと上の世代には力の

ある作家さんがたくさんいて、しのぎを削っていて、なかなかそれを打ち破ること

ができず、ちょっと下には大江健三郎のような若くて有名となった人もいました

から。

 黒井さんは大学を終えてからサラリーマン生活(出版社とかでなく、普通の

会社)を経験したのが珍しいといわれていたはずです。38歳で会社(富士重工

業ですからスバルですね)をやめて、筆一本の生活になって、40歳の時には

坂本一亀さんがセレクトした作家を集めた「新鋭作家叢書」にも選ばれていま

す。

 とういうことで、注目の作家ではあって、小生のアンテナにもかかったのです

が、食指はのびなかったのですよ。そうしたことからいえば、手にする機会を与え

てくれた講談社文芸文庫ブックオフには感謝しなくては。

 本日はさらにすこしの待ち時間がありましたので、それを利用して表題作の

「石の話」を読むことになりです。30ページにも満たない短編で、あっさりと読

めてしまうのですが、特にこった仕掛けをするということもなしでありまして、

ちょっと読後感は物足りなくもあり、短編を書くというのは難しいなと思うこと

です。

 せっかくのことですから、これに収録のほかの作品も読んでみることにいたし

ましょう。

 本日に黒井さんの本を購入したのは、お生まれが1932(昭和7)年であるた

めでもありました。先日に亡くなった、ご近所にお住まいだったご婦人も同年

生まれでしたが、小学校は国民学校になり、旧制中学は併置中学校になって、

男女共学となった新制高校の最初の卒業生というのが、昭和7年お生まれの

方々で、後藤明生さんも同年ですが、後藤さんはこれに引き揚げが加わり、

黒井さんはメーデー事件での体験が加わりますが、メーデー事件で被告人と

なった新日本文学会の田所泉さんも同年生まれであって、黒井さんも最初は

新日本文学会に参加していましたので、ここには接点がありそうです。