ラジオの日

 本日の午後はNHKFMで放送されている「戦後歌謡三昧」を聞いています。

なんといっても、9時間ほども続く番組でありますので、聞くことのできない時間

もあることから、パソコンに録音しながら、アナログFM放送を聞くことになりです。

 やはり、ラジオはインターネットではなく、FMチューナーで受信して聞くのが

一番であります。

 本日に「戦後歌謡三昧」を聞いていて反応したのは、18時すぎに声優の羽佐

間道雄さんが登場して、進行役の加賀美幸子さんとお話しながら、音楽をかけた

ところであります。 

 お二人とも戦前のお生まれでありまして、子ども時代は家庭でラジオを聞くの

が娯楽という育ち方をしたと思われます。当方は、年齢的には10歳ほど若いの

ではと思いますが、テレビ番組を日常的に見るようになったのは10歳過ぎた頃

のことで、それまでは家族だんらんの時間にはラジオを聞いていましたですね。

 ラジオをかこんでの時間というのは、これから高度成長を迎える日本では普

通なものでありました。最近もラジオは聞かれているのでしょうが、家族がみな

してということはなくなったようです。これはちょっとさびしいこと。

 本日の放送では、羽佐間道雄さんが登場してすぐにかってNHKに在籍し、

独特のナレーションで人気があった中西龍さんのことを話題としました。

羽佐間さんは、中西さんのことを「NHK退職後に自分がやっている事務所に

入ってもらった」といってから、美空ひばりさんのあまり知られていない曲の

入ったカセットテープをコメントとともに送られたといって、その曲をかけるよう

リクエストしていました。

 いかにも中西龍さんらしい話であると思って聞いたのですが、中西さんの

ことを書いた小説に、この逸話はでているだろうかと途中まで読んでなげて

あった文庫本をひっぱりだしてきました。

当マイクロフォン (角川文庫)

当マイクロフォン (角川文庫)

 

 小説ではありますが、かなりのところまで事実をベースにしていると思われ

ますので、美空ひばりさんのくだりを紹介です。

「週末の昼前、紺の背広をきちんと着た男が、アナウンス室に龍を訪ねてきた。

男はものごし丁寧に、『ビッグショー』を担当している末盛と申します、と挨拶し

た。

 えっ、と驚いた。末盛憲彦の名は龍もよく承知している。局歴は龍よりもやや

後輩だが、テレビ草創期に『午後のおしゃべり』『夢であいましょう』といった番

組の演出で一世を風靡した芸能ディレクターである。」

 伝説のディレクター末盛さん(すえもりブックスの末盛千枝子さんの最初の

ご主人で、若くしておなくなりです。)は、中西さんのところに「ビッグショー」で 

美空ひばりの番組をやるので、そのナレーションをしてもらいたいという話を

持ち込むのですが、これはひばりの母の意向で、実現せずでありましたが、

その次の「ビッグショー」の企画で実を結ぶことになります。

「翌年にふたたび美空ひばり出演の『ビッグショー』が企画された際、末盛は

約束を律儀に守った。

『ひばりさんもお母様も、『にっぽんのメロディー』の中西さんのお声に心酔さ

れているようです。今回は、ぜひ中西さんの語りで構成したいというご要望で

す。・・・

『ビッグショー 美空ひばり・わが歌のさだめに生きて』は五十分間を美空

ひばりの唄と中西龍の語りだけで構成した番組になった。・・・

 美空ひばりとの縁はこれだけでは終わらない。龍の語りに惚れ込んだ美空

ひばり自身からの要望で、その年の暮れから翌年初頭にかけて行われた

『芸・ひとすじの道 美空ひばり三大都市コンサート』というリサイタル公演

に、龍はナレーションで参加することになった。」 

 最初の「ビックショー」というのは、美空ひばりさんが4年ぶりにNHKに出演

するということで話題になったものでありまして、両者の緊張関係が伝わって

くるような逸話であります。そんな時に、末盛さんと中西さんが組んでとりくん

だのですね。

「結局、中西龍は特別職に昇進することのないまま、昭和59(1984)年6月、

56歳の誕生日の前日にNHKを退職した。・・・大きな組織を離れることに不安

はあったが、ある声優事務所からマネージメントの申し出があり、意を決した。

ラジオ番組『にっぽんのメロディー』への出演は、特例として退職後もつづくこ

とになった。」

 この声優事務所が羽佐間道雄さんが代表となるもののようです。羽佐間さん

のお兄さんはNHKのアナウンサー羽佐間正雄さんとのことで、そういうことも

関係したのでしょうか。

 小説になるくらいでありますから中西龍さんは、NHKらしからぬ破格の人で

ありました。組織での出世よりも人々の記憶に残る語りの職人として生きるで

あります。

 本日のラジオを聞きながら、そのようなことを思い浮かべました。中西龍さん

の「にっぽんのメロディー」の語りは、いくつかネットにアップされていますので、

それを貼り付けておくことにしましょう。


中西龍 にっぽんのメロディー a