バスで読書

 本日は夜に飲み会がありまして、バスで外出することになりました。

車で移動しているときはハンドルを握っているせいもありまして、本を読むこと

はできませんが、バスに乗る楽しみは、本を読むことができることであります。

乗っている時間は30分で、本日に読んでいたのは「みすず」4月号でありまし

た。

 「みすず」といえば、小沢信男さんの文章を読むために定期購読しているの

でありますが、今月も健在でありました。今月は4月ということもあって、万愚節

がテーマでありました。

 今月の発句になっているのは、安住敦さんの

 「 万愚節に恋うち明けしあはれさよ 」というものでありました。これを受け

ての文章は、次のものとなりです。

四月一日は、思いがけぬ嘘ついたり担いだり担がれたりをおたがいに楽しむ

日。このエイプリルフールの四月馬鹿または万愚節は、つとに春の季語ですが、

いつ伝来したものか。」

 こと今年の日本に関しては、4月1日には新元号の発表があったせいもあって、

いつもより「思いがけぬ嘘」は、少なかったかもしれませんが、元号発表の後に

あった総理の話が、とんでもない・・であったりしてです。

 本日にバスのなかで読んでいたのは、「神話を乗り越えて」という松本俊彦

さんのものになりです。依存症を専門にする精神科医だそうです。

 松本さんが紹介する少年院で出会った「入所前は暴走族の総長を務めてい

たという少年」の話が興味深いものでありました。

「彼は、毎晩、消灯後の暗闇のなかで両目を見開いたまま金縛りに遭っていた。

幼いころ、何時間にもわたって父親から殴られ、頭髪を鷲掴みにされて何度も顔

を風呂の水に浸けられたときの記憶が蘇ってくる。・・・暗闇のなかでこのような

映像の断片と対峙しているうちに、彼は恐怖に圧倒され、いま自分が何歳なのか

もわからなくなってしまうのだという。誰がどう見ても典型的な心的外傷後ストレ

ス障害のフラッシュバックだ。」

 子どものころに親から暴行されたことにより、脳に障害が起こるということがい

われていますが、この事例もなどもまさにそうでありますね。この事例を見て、すぐ

に思いだすのは、父親から虐待を受けて10歳で亡くなった少女のことであります。

それにしても、普通に働いていたといわれる父親は、なぜ子どもに執拗な暴行を

加えたのかであります。

 松本さんの文章の終わりのほうにあるくだりです。

「少年矯正の世界から学んだことが二つある。ひとつは、『困った人は困っている

人かもしれない』ということ、そしてもう一つは、『暴力は自然発生するものではな

く、他者から学ぶものである』ということだ。」

 なんとなく思いあたることがあることです。