先日の行きつけの本屋で購入した新刊文庫本であります。
これの元版がでたのは2016年のことだそうです。野坂さんが亡くなった
翌年に刊行となって、それから3年ほどたって文庫となりました。元版がでた
のは知っているはずですが、中をのぞいてみたことはなしです。
野坂さんは2003年に脳梗塞で倒れて、それからの12年間の創作活動は、
夫人への口述筆記となりです。野坂さんといえば、すこし早口でどもるような
文体が魅力でありまして、これが口述筆記ではどうなるのかと思って、これを
読んでみようと思いました。
帯には「急逝のわずか数時間前まで書き続けられたラストメッセージ」とあ
りました。亡くなる直前まで文章を発表していたということですが、それはどこ
にと思って初出を見てみましたら、「だまし庵日記」というタイトルで、2007年
4月号から2016年1月号まで「新潮45」に連載したものとありました。
「新潮45」でありますか。昨年にあっさりと休刊(廃刊なのかな)してしまった
雑誌ですが、こういう連載発表の場となっていたとすれば、やはり残しておいて
欲しかったことです。
野坂さんは、本当に流行作家でありまして作品数が多くて、一時期にはずい
ぶんと多くの文庫本が書店にならんでいたのに、いつのまにか岩波現代文庫
とか文芸文庫でしか読むことができない作家になってしまいました。最近の
若い人にはほとんどなじみのない作家さんでしょう。
新潮文庫には「火垂るの墓・アメリカひじき」と「エロ事師たち」がなんとか
残っていますが、「火垂るの墓」とか「絶筆」の野坂さんは、すこしストレートに
まじめすぎて、おすすめするとすれば「エロ事師たち」でしょうね。