本屋めぐり

 先日にあちこち用足しにいった時に、本屋にも立ち寄りました。行きつけの

本屋とブックオフでありますが、本屋では新刊の文庫本を確保し、ブックオフでは

申し訳ないような値段で「荷風随筆」を入手であります。

 まずは新刊本のほうですが、これはでたら買うことにしている小林信彦さんの

「本音を申せば」シリーズ12であります。

映画狂乱日記 本音を申せば12 (文春文庫)

 小林信彦さんの「本音を申せば」は単行本としてまとめられた時のタイトルと

文庫になった時のタイトルが変わるのが普通でありまして、これの単行本の時

は「古い洋画と新しい邦画と」でありまして2016年5月に刊行のものです。

 これに取り上げられている「新しい邦画」で目をひくのは「海街diary」につい

てのものです。この回の見出しは、「『海街diary』の感動」となっています。

「まず是枝裕和監督という名前が大きい。父と母に捨てられた三姉妹を、

綾瀬はるか長澤まさみ夏帆が演じるので観たのでしょう、とぼくに言った人

がいたので苦笑した。いまの日本ではこれらのスターの名は大きいが、彼女ら

をまとめてゆく監督はかなりの力を持っていなければならない。その点、是枝

監督の存在は信用できる。」

 2016年でありますから、是枝監督の評価はすでに確固たるものがあるので

すが、それでも小林さんがこのようにこのコラムで書くと、普通の人は小林さん

がこのように言うのであれば、映画を見てみようかとなるのですね。

小林さんが若い女優さんの目利きであることは、それまでの「本音を申せば」を

見ればわかることであります。

 本日の新聞に掲載されていた記事に「是枝映画 魅力の源泉」というもの

がありました。これのリード文は、次のようになりです。

カンヌ国際映画祭是枝裕和監督の『万引き家族』が、日本勢として21年ぶ

りの最高賞パルムドールを獲得した。『幻の光』で初めて劇映画のメガホンを

取ってから20有余年。国内外で高く評価されてきた是枝映画の魅力の源泉を

探った。」 

 ここでは魅力の源泉をということで、子どもたちの自然な演技、ホームドラマ

中に社会性、先鋭から洗練にという三つをあげていました。その区分によります

と「海街diary」は洗練ということになるようです。

 新聞記事の書き出しではカンヌの審査員長をつとめた女優ケイト・ブランシェッ

トが安藤サクラの演技を絶賛したことが紹介されるのですが、もちろん安藤サクラ

さんも小林信彦さんは、早くから注目でありましてこの巻では「安藤サクラとハード

ボイルド」という文章で、「安藤サクラは『愛と誠』(三池崇史作品)などで、動きの

キレる女優だと記憶していたが、ここまで動けるとは思わなかった。とはいえ、なみ

なみならぬ努力をしなければ、こうはいかない。」とあるのでした。 

 小林さんは最近あまり映画館へと足を運ぶこともできなくなっているようです

が、当方などまだまだ若いのでありますからして、もっともっと好奇心をもってやら

なくてはいけないことであります。

古い洋画と新しい邦画と 本音を申せば