なかなか難しい

 八月ということもあって、いまから八十年ほども昔の日本を舞台としたドラマが放送
されています。当方はもちろんその時代には生まれてもいないのですが、最近に制作さ
れた戦時中のドラマなどを見ますと、この時代にそうしたものを作ることの難しさを
感じてしまいます。
 セットとか登場人物の服装などは、その昔の雰囲気をだそうとしているのですが、
どうみても、現代ものにしか見えないのでありますね。まあ、これはしょうがないと
いえば、そうなんでですが。
 誰の逸話であるのか忘れましたが、その昔の時代物の小説家が、道路を歩いていて、
前のほうから三田村鳶魚さんが向かってきたら、あわてて横みちにそれて、顔をあわせ
ないようにしたというような話を眼にしたことがあります。
 もちろん、これはその小説家の時代考証が雑で、とっても江戸を舞台にしているとは
言えないというような批判を受けていたからでありましょう。三田村鳶魚さんが、そう
批判していたのかもしれません。
 三田村鳶魚さんは、明治になってすぐに生まれた人ですが、まわりには江戸の人たちが
たくさんいましたので、江戸の空気を吸って暮らしていたのでしょう。
 ここのところ過去に制作された早坂暁さんのドラマが再放送されていました。昨年に
亡くなった早坂さんの遺作ともいえる作品をドラマ化するにあたり、同じテーマの過去作
品を、まずは見て予習してくださいという主旨だったのでしょう。
 早坂さんは、実に多くの作品を残していて、シリアスなものからはちゃめちゃなものま
ででありますが、当方はむしろはちゃめちゃなシリーズもの「天下堂々」「天下御免」と
いうのが好きでありましたが、今回の作品は、自伝的な色彩の強い「花へんろ」シリーズ
でありました。
 85年から87年に放送された「花へんろ」を再構成した90分のドラマを見て、大いに楽
しみました。これは、どうやら登場人物のほとんどが当方よりも年長で、その時代の雰囲
気が良く出ていると感じられたからであります。沢村貞子中条静夫殿山泰司、田武謙
三、加藤治子そして藤村志保
 こうした人たちが登場する昔の時代設定ドラマは、その時代の雰囲気が感じられること
でありまして、この時代の雰囲気をだそうとするのは、最近ではほとんど無理となってい
るようです。
 だからといって、制作しない方がいいということにはならないので、ほんと難しいこと
であります。