今月の新刊

 今月の新刊広告には、気になる文庫本が一冊ありました。プレミアム文庫ではなく
て、普通の文庫でありますからして、近所のコンビニ本屋さんに入荷していて購入す
ることができました。

 大学で教員をしていたという経歴の博士が介護の現場に飛び込んで、そこでの体験
をもとに本を出して話題となっていたことは承知していたのですが、これがなかなか
読むことができずで、今月にいたっていました。
 最初に、この方の名前を聞いたのは医学書院からでた「驚きの介護民俗学」の時で
ありましたが、医学書院の編集者さんの目のつけどころはすごいですね。
驚きの介護民俗学 (シリーズ ケアをひらく)

驚きの介護民俗学 (シリーズ ケアをひらく)

 当方は、その頃介護現場に関係していたこともあって、関心はあったのであります
が、どうも直接仕事につながるように感じる本は遠ざけたほうがいいという防衛本能
からか、意識して近づかずでした。
 すこし介護現場に身をおいて、そこでどのようなことが仕事として行われているか
を体験してみると、なるほどな、そうだよなと思うことがあちこちにありです。
 たとえば、「第二章 死を想う」にあるくだり。
「こんなにも死が身近な場所であるにもかかわらず、介護の現場からは死が遠ざけら
れる傾向にあるように思うのだ。
 たとえば、私がかって勤務していた大規模ディサービスでは、利用者さんが亡くなっ
たという知らせを家族から受けても、それを他の利用者さんたちに伝えるということ
はしなった。利用者さんたちが動揺し、混乱するからというのが理由だ。しかも亡く
なったことだけでなく、それ以前に入院していたことも利用者さんたちには伝えられて
いなかった。利用者さんたちに心配をかけないためとか、自分自身に引き込んで落ち込
んでしまうのを避けるためとか、いろいろ理由づけはされていたが。」
 ディサービスの利用者さんは、決まった曜日に通ってきて、初めて利用するときには、
他の利用者さんたちに紹介されるのですが、体調を崩されてお休みしたり、入院して
利用を中止することになっても、その事情を説明したりはしないものです。もちろん
亡くなったという知らせがあっても、スタッフ同士での情報共有はあるものの、それを
同じ曜日の利用者さんにお知らせするというのはあまりなされていないのではないで
しょうか。ディサービスという場で知り合った利用者で、意気投合して昔からの旧知で
もあるような関係になる例もあることです。
 そのような人たちに、別れの時が来たとしたら、それをどのようにして伝えていく
かでありますね。それについての実例がありまして、その点については、なるほどと
思いましたです。
 そろそろ当方が、介護施設の利用者となっても不思議ではない年齢となってきまし
た。自分が、そうなったら、どうして欲しいと思うでしょう。