ブックオフでもう一冊

 昨日のブックオフでは、もう一冊購入しておりました。こちらのほうを先に手にし
ておりまして、そのあと「中上健次全集」を見つけたのでした。

北海道の地名

北海道の地名

 今年は「150年」の節目の年であるということがいわれていますが、先日に手にして
いた「思い出す人びと」の森銑三さんでありましたら、なにが150年であるかというと
ころでしょう。
 この本で森さんは、次のように記しています。
黄表紙などというものは、全くの江戸の郷土文学的作品で、西洋にはその類の作品
がないからであろうか、西洋の尺度を借りて来て、わが国の作品をも計ることをする
研究家の人々は、殆ど顧みようともせぬのであるが、それだけにまた私などのような、
人の思わくに拠らずに、自分の眼で物を見て、よいものはよいと断じようとする者は、
黄表紙解題』のよふな仕事にも、自分だけの意義を認めているのであり、その仕事
を、今少し進めたいものとも思っている。ただ出来上がった『黄表紙解題』を、林、
三村、その他の江戸党の人々、それから柴田宵曲子のような特殊の士に、改めて見て
貰うことの出来ないのが遺憾である。」
 森さんなど江戸党の人たちにとっては、明治維新とそれからの極端な西洋化は不快
極まりないものであったでしょう。
 もう一つの150年は、松浦武四郎が「北海道」という国名を提案し、それが取り入れ
られてからであります。
 もちろん、松浦武四郎以前にも北海道の地名(もちろんアイヌの人々が使っていた
もの)を記録したものはあったのですが、江戸から明治という時期に、松浦武四郎
存在は大きかったようであります。
 北海道の「国(郡)名建議書」というのを太政官に差し出して、だいたいこれに
よって11の国と、さらにそれを郡にわけることとなったと、山田秀三さんの「北海道
の地名」にはあります。
 アイヌの人々が呼んでいた土地の名前をとって、北海道の地名は定着していて、国
名とか郡名にも、それは及んでいるのですが、北海道というのは松浦武四郎によるも
のがベースにあるとのことです。
 山田さんは、ぞっこん北海道の地名に惚れ込んで、それについての著作を何冊も刊
行しているのですが、「北海道の地名の主なものは、殆どがアイヌ語系のもので、そ
れが北海道のきわだった地方色であり、独特の風趣を漂わせている。」と、この本の
序の書き出しで書いています。
 山田さんの序には、次のようにもあります。
「北海道の地名が、我々の時代にも多く変わって、アイヌ語系の地名も消えて行った
ものが少なくない。アイヌ時代から開拓時代を通って来た歴史的地名を、内地にごろ
ごろある、平凡で特色もない地名に置き替えられるのがもったいない。」
 北海道という呼称も、アイヌ語系によったものでもよかったのにと思ったりです。