落雪つづく

 本日は朝からプラス気温が続いて、夜にいたっています。アメダスによりますと一日
で積雪は三センチほど減っています。暖気によって、先日に降った雪がどんどんと溶け
ていることになりです。
 住宅の屋根の雪もどんどんととけていて、日中からなんどもどんどんと音をたてて
雪が落ちています。屋根に接しているところはがちがちに凍っていますので、落雪する
時に、屋根の下にいたりしますと大変なことになりです。もちろん、こんな時に屋根に
上がって雪下ろしをするのは、無謀なことです。
 本日は神西清さんの小説やら森銑三さんの「思い出すことども」などのページをめ
くっていました。
 森さんの本では、なんといっても資料編纂所における官僚主義への反発が眼をひくこ
とであります。本日もすこし引用を。
「図書部の主任の席に近いところの壁に、山陽の双幅が懸けられていたことがあった。
それに気の附いた松岡翁が、椅子を離れて見に行かれたが、一目見るなり、仏頂面して
返って来られた。その顔附で、すぐに分かったことだったが、念のために、いかがです
か、と問うて見たら、ただ一言、いけませんとだけいって、そのまま仕事にかかられた。
折から主任は席を外していたのであるが、松岡翁は、主任にむかって、この幅はいけま
せん、などとはいわれはしなかったであろう。もしいわれたとしたら、主任から、木展
で良いものと極まったのに、あなたはけちを附けるのかあ、とでも叱られることになっ
たであろう。松岡翁の存在などは、全く無視せられていた。」
 松岡翁というのは、森さんがその能力を高く評価する先輩職員でありますが、所内で
の身分は、森さんよりもさらに下となる写字生でありまして、所内の高官からは、彼は
単なる写字生と見られていたとのことです。
 森さんからすれば、次のようになります。
「写字生というのは、他から借りてきた古文書や古記録を、影写したり略影写したり
するのが仕事で、それにはそれらを読みこなす力が必要なのだから、誰にも出来る仕事
ではなかったのに、所員の内には数えられていなかったのであろうか。」
 最近の組織は、このように能力はあるけど、いつまでたっても地位が低い人への対応
というのは、森さんの時代とは変わっているのでしょうかね。