「古都の占領」

 このところ図書館から借りた西川祐子さん「古都の占領」を読んでいます。これが
ほんとに興味深い(面白い?)のであります。

古都の占領: 生活史からみる京都 1945‐1952

古都の占領: 生活史からみる京都 1945‐1952

 先日も、この本を読んで「府立植物園」に占領軍の住宅が建設されていたというこ
とを初めて知ったと記しましたが、現在の京都で占領時代の跡を見出すのは大変であ
りましょうから、このように人々の記憶と資料からきちんとした書物として残すこと
の意義はとても大きいといえましょう。
 そんなふうに思っておりましたら、今月の「みすず」アンケートでもこの本をあげ
ておられる方がいましたです。それはといえば、山田稔さんであります。 山田稔さんがこのアンケートであげている本は、いずれも他の人とはかぶらないも
のでありまして、どれも山田さんらしい。
ちなみにあげているのは他に「SURE」の本2冊、編集工房ノアの涸澤純平さん「遅れ
時計の詩人」、そしてイーユン・リー「黄金の少年、エメラルドの少女」となりです。
遅れ時計の詩人―編集工房ノア著者追悼記

遅れ時計の詩人―編集工房ノア著者追悼記

黄金の少年、エメラルドの少女 (河出文庫)

黄金の少年、エメラルドの少女 (河出文庫)

 山田稔さんが最初にあげているのが「古都の占領」で、この本についてのコメント
は、いつもの口調よりも厳しいものとなっています。本の内容について辛口であるの
ではなく、この国の現状についてでありましょうか。最後のくだりだけを引用です。
サンフランシスコ条約により日本は独立国になったと信じこまされている日本人。
主人の言いつけを守り頭を撫でられているうちに奴隷は自分が奴隷であることを忘れ、
主人と同等の口をききはじめる、今から五十年以上前にこのように書いた富士正晴
言葉を思い出した。」
 どこまでも主人に忠実なその姿勢をみますと、痛々しくも感じることであります。
その昔に頭越しに中国との国交交渉などもありましたが、最近の朝鮮半島の情勢を
見ていても、この国は、なんとなくおいていかれそうな感じでありますね。