鮭児文学賞

 16日(日曜)の北海道新聞読書欄に掲載となった豊崎社長の第6回

鮭児文学賞の発表を本日目にすることができました。

北海道新聞という地方紙(とはいっても北海道では圧倒的なシェアであ

りまして、北海道で新聞といえば、ほぼ「どうしん」のことと思って間違い

ありませんです。)ですから、これに掲載されている豊崎社長の「鮭児文学

賞」のことは、あまりネットで話題になることもなく、これは残念なことと、

当方はこれの結果を拡散する役をかってでるのでした。

 しかし、好きか嫌いかは別にして豊崎社長らしい選考でありまして、この

くせの強い人に、6年もコラムを担当させている北海道新聞は、本当に懐が

深いことであります。

 ということで、今年の「鮭児文学賞」です。今年のノミネートは二冊だそう

ですが、ともに女性作家の作品でした。

 一冊は山尾悠子さんの「飛ぶ孔雀」でありました。 

飛ぶ孔雀

飛ぶ孔雀

 

  豊崎社長が先に紹介するのは、「飛ぶ孔雀」でありました。山尾悠子さんは、

名前だけは知っていたのですが、作品は読んだことがなく、今年に八年ぶりに

新作(この作品)がでたということで話題になり、当方も図書館に入っていたの

を借り、夜にふとんに入ってから読んでみたものです。

 この作品は、当方がなじんでいる小説とはタイプが違いまして、一部でその評

判が高いだけに、なんとかして読み通すことはできないものかと思いました。

残念なこと、図書館本は期間延長をかけて、読もうとしたのですが、なんとも

ページをすすめることができず、返却したのでした。

 この作品のことを豊崎社長は、どのようにすすめているのかであります。

「この物語を、頭(理屈)で理解しようとすると「?」が増殖するばかりです。

山尾語ともいうべき文章を丁寧に追っていき、その場その場で生成される

エピソードと美しい描写の数々をひたすら味わい尽くす。それが、この連作長編

を愉しむコツといえましょう。」

 そうなんだよな。当方は散文を頭で理解しようとするから、詩的なイメージを

喚起する作品は、うまく読み解くことができないという欠点があるのだよな。

上に引用したのに続いて、次のようにあるのです。

「わからなさ加減は、後半部にあたる「Ⅱ」に入ってさらに強まります。ついて

いけない人もでてくるかもしれません。」

 当方は、前半のかなり早くについていけなくなったのでありますからして、

中盤すぎどころの話ではありません。これにおっかけての部分です。

「この小説を楽しめるか否かは、行間から立ち上がってくる美しいイメージの

数々に夢中になれるかどうかの感性にかかっています。わからなくたって

愉しいと思える稀有な小説が、この『飛ぶ孔雀』なのです。」

 わからなくても、ぜんぜんかまわないというのですが、わからないのに付き合

うことができるかなです。

 ここまで豊崎社長の力がはいっていましたら、今年の鮭児文学賞は、この作

品できまりでしょうと思いきやです。「山尾作品は、この9月に泉鏡花賞を受賞

したということですし、やっぱり今年の受賞作は『オブジェクタム」にしようとな

るのでした。「オブジェクタム」という作品も、作者もともにまったく知らないの

でありまして、こっちのほうが「鮭児文学賞」らしいですか。 

オブジェクタム

オブジェクタム