図書館の本 2

 先日に間村俊一さんの「彼方の本」を借りた時に、あわせて借りた本

についてです。

 まずは「のこす言葉 野見山暁治」です。

野見山暁治 人はどこまでいけるか (のこす言葉 KOKORO BOOKLET)

野見山暁治 人はどこまでいけるか (のこす言葉 KOKORO BOOKLET)

 

 エッセイの名手としても知られる画家の聞き書きのようなスタイルの一冊。

これまで何冊かでているのでしょうが、なかなか目にすることができない平凡

社のシリーズのもの。

 これは、「人生の先輩に聴く、言葉の宝物。語りおろし自伝シリーズ」とあり

ます。読みやすそうなのがよろしですが、本のサイズは新書よりも一回り大きい

くらいですが、ハードカバー。値段1200円というのは微妙なところ。

 野見山さんの話であれば、面白いに違いないと思って借りたのですが、子ど

も時代を炭鉱町で暮らしたとは知りませんでした。

「ぼくは福岡の筑豊で、小さな炭鉱屋の長男として生まれた。」とあります。

1920年生まれですから、すでに98歳でありますか。日本全国からほとんど

姿を消してしまった炭鉱ですが、子どもの頃の生育環境は最悪でありまして、

「炭鉱を仕切っていた親父は、山のなかでは殺気立っていた。」と言っていま

す。そうでしょうね、ほとんど小説でしか知らない世界であります。

 そんなあらくれの世界から画家を目指して美術学校を目指し、めでたく合

格することになりますが、繰り上げ卒業して、召集となり、従軍しています。

この時、野見山さん22歳であります。

「もちろん、絵は描けません。我慢するも何も、軍隊に入れば当たりまえのこ

とだった。そのうち満州ソ連国境に近いところに連れていかれた。何の色

もない世界でした。 ・・・

 ぼくは戦地で病気になって、しばらく死にかけていました。生と死は紙一重

で、ほとんど差がない。病室で隣のベッドに寝ていた兵隊は死にましたが、そ

れは自分かもしれなかった。とすれば、ぼくの絵がいま『無言館』に飾られて

いた。」

 このくだりを目にした時、長谷川四郎さんの小説のことを思いだしました。

 フランスへと留学したときは、パリの日本館で暮らすことになるのですが、

その一階上に住んでいた加藤周一さんからアドバイスを受けたという話が

紹介されていました。あれこれと興味深い逸話がいっぱいでおもしろいこと

であります。