「みすず」11月号

「みすず」11月号が届きました。まずは表紙裏を見まして小沢信男さんの「賛々語々」
に目を通しました。今月の発句は清水哲男さんのもので、季語は「ふゆいちご」であり
ました。
 冬苺というの野生のいちごだそうで、当方の住む地方でも路傍にある野生のいちごに
見た目は近いのですが、北海道には自生していないとのことですから、これまで当方は
目にしたことがないようです。
 すでにいつ雪が降っても不思議でない気候となっている当地でありますが、庭の境目
に植えてあるいちごの小さな実が赤くなっています。「ふゆいちご」という季語を目に
した時、これのことが頭に浮かんできました。

 「賛々語々」の次に読んだのは、今月号の背表紙に印字されている土田昇さん「大工
道具屋の鍛冶行脚」であります。これは副題に「名人、千代鶴是秀に導かれるように」
とあるのですが、大工道具をつくる名人鍛冶にこのような人がいることは承知しており
ましたが、それは名前が珍しいことと、その名人の手になる道具がすごい値段で取引さ
れているくらいでありました。(たぶん、これはかって読んだ岩波新書「大工道具の
歴史」と「何でも鑑定団」によって得た情報でありましょう。)
 今年の二月にみすず書房から「職人の近代――道具鍛冶千代鶴是秀の変容」という本
が出たのには驚きました。

職人の近代――道具鍛冶千代鶴是秀の変容

職人の近代――道具鍛冶千代鶴是秀の変容

 なんといってもみすず書房らしくない内容でありますからね。どこかで立ち読みでも
してみましょうと思っているうちに出たことも忘れておりましたら、この著者による
エッセイが「みすず」11月号に掲載となりました。このエッセイは次号にも続くという
ことですが、これは当方にとってなじみの薄い名人たちの話でありまして、とても興味
深いことであります。