古山高麗雄伝

 しばらくほっておいた「古山高麗雄伝」を読んでおりました。

戦争小説家 古山高麗雄伝

戦争小説家 古山高麗雄伝

 昨年の二月に最近買った本としてこれをあげていますので、さらっとでも通して
読むまでに一年もかかってしまったことになります。これはずいぶんとかかったこと
であります。
 この本の著者は1976年お生まれの方で、戦争の時代への関心から、戦争小説を書き
綴っていた古山高麗雄さんを追いかけるようになったとあります。
 当方が古山さんに興味をもったのは、安岡章太郎さんの作品モデル(「悪い仲間」)
としてですので、ちょっとスタート地点は違うのですが、古山さんの著作を丹念に
読んで、そして書名に「伝」とありますように家族、生い立ち、職歴と細かいところ
についても書かれているのは参考になることであります。
 昨年に購入して、すぐに読んだのは「悪い仲間との訣別」でありまして、それ以外
のところが、ほっておかれたことになりです。
 当方は若い頃から、なんとなくいつも少数派に属していまして、そんなこともあって
落ちこぼれた人たちの書くものを好んでいました。若い頃には、落ちこぼれたと自称す
る作者たちは、ほんとうにそうなのだろうと思っていたようなところがあるのですが、
決して落ちこぼれの作者たちは、世間の落ちこぼれではないと思ってからは、その作品
世界から離れるようになっていました。
 そんなところでおこったのが「悪い仲間との訣別」でありまして、安岡さんの仲間で
あると思われた古山さんの関係が悪くなったのは、古山さんが編集する「季刊藝術」に
掲載された川嶋至さんの「事実は復讐する」が、安岡さんの怒りをかったことにより
です。
 けっこうこの川嶋至さんの文章は話題となりましたが、いまでもなかなか簡単に読む
ことができないというところに、「悪い仲間」の怖さがあります。
この件に関しては安岡さんはとっても分が悪いのでありますが、安岡さんがこれに関し
てなにか発言していれば、ぜひとも読んでみたいと思いますが、どうでありましょう。