本の雑誌 11月号 2

 本の雑誌11月号の目次を見ましたら、坪内祐三さんの読書日記の見出しに、「宇能
鴻一郎」さんの名前がありました。

本の雑誌401号2016年11月号

本の雑誌401号2016年11月号

 読書日記を見てみましたら、8月12日の欄にその名前が登場です。坪内さんは、この
日に東急東横店で開催の「渋谷大古本市」へと足を運んだのですが、この古本市の
キャッチコピーが、まるで宇能鴻一郎の小説からいただいたみたいではないかという
内容でありました。どんな書きっぷりであるかは、雑誌をご覧下さいですが、宇能
鴻一郎さんとは、最近めったに話題にならない作家です。
 宇能鴻一郎という名前を聞いて、なつかしく思った人のほとんどは50代後半以上で
ありましょう。まして、その方が芥川賞を受けた作家であるなんて、ほとんど知っては
いないのではないかな。
 とはいっても当方は、宇能さんの作品はまったく読んでいませんで、なにかのおりに
連載されていた作品の一回分を眼にしたくらいです。それでも、そうしたところで眼に
した宇能さんの文体(というか、むしろ語りかな)には特徴があって、ちょっと見た
だけで宇能さんとわかったものです。
 宇能さんがどうして有名であったかというと、芥川賞を受けた作品のなかでは別格の
ようにその初版本が高額であったからであります。状態がよろしいものは、いまでも
高額でして、戦後の受賞作としては柏原兵三さんの「徳山道助の帰郷」と双璧でありま
す。
 ということで、最近に手にした本で宇能さんのことを、まじめに取り上げていた本が
ありました。
野蛮な読書 (集英社文庫)

野蛮な読書 (集英社文庫)

 この本の第二章が宇能鴻一郎私論となっていまして、そのタイトルは「わたし、おの
のいたんです」というものです。この文章は、おすすめであります。平松さんの宇能
鴻一郎さんへのオマージュが伝わってきます。
 これはいい文章だなと思っていたら、「本の雑誌」で平松さんは「立ち食いそば」屋
さんの訪問記を連載していて、何号か前には坪内さんと一緒に早稲田界隈のそば屋めぐ
りをしていました。このときに立ち食いそば屋さんをめぐりながら、宇能鴻一郎作品の
話題でお二人が盛りあがっていたら、とってもたのしいのに。もちろん、その時の
お二人の会話は、宇能鴻一郎さんの登場人物の口調をまねなくてはいけないですね。