月がかわって 4

 岩波「図書」10月号に掲載の文章で目にとまったものからです。
 最近の「図書」は、前よりもずっと軽量級の寄稿者が増えているようです。岩波と
いえば、どちらかというと権威主義的な匂いを感じたものですが、最近はそれでは
やっていくことが難しくなっているということでしょう。
 今回はフリー編集者 稲垣伸寿という方が「小説サバイバル」という文章で登場して
います。書き出しでは「この一月に会社を離れ、フリーランスとなった。」とありま
す。当方は、稲垣さんという編集者のことは知りませんでしたので、どんな経歴の人な
のかなと思って検索をかけてみましたら、矢作俊彦さんと関係の深い方とのことでした。
 稲垣さんの文章から引用です。
「小説を書く人は増えているが、読む人は減っている。これは事実だと思う。曲がりな
りにも小説に関わる仕事をしてきた者の実感として、それは確信を持って言いきれる。」
 書く人は増えるのに読む人は減っているというのは、書く人は読まないということに
よるもののようです。
 ということは、小説を読む人は書く人にはなかなか向かっていかないということです
ね。
「ある文学賞の選考に少しばかり関わっているが、応募者の一覧を見てみると、半分以上
は六十歳以上の方たちなので、びっくりしたこともある。」ともありました。六十歳を
超えてから文章修業をして、文学賞の佳作になるというのはあるかもしれませんが、
読んでみたいかといえば、そのような気分にはならないでしょうね。
 この文章の次におかれているのは島田潤一郎さんの「九十年代の若者たち」というもの
で、この島田潤一郎さん(もちろん夏葉社代表)の文章を、はじめて読みましたです。